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日経ビジネスオンライン

2018/02/09

連載履歴

日経ビジネスオンライン連載「技術経営 – 日本の強み・韓国の強み」 アクセスランキング
1.「就活時点で日本は負けている」(2013 4.19)———————————-12位
2.「新人研修は育てる場か競わせる場か」(2013 5.2)——————————12位
3.「新入社員がいきなり課長級のサムスン」(2013 5.16)—————————-3位
4.「『技術に上下関係なし』を信じて痛い目に」(2013 5.30)————————5位
5.「部下に絶対服従を強いるサムスン」(2013 6.13)——————————–7位
6.「ホンダの自前主義は人を育てる」(2013 7.4)———————————-10位
7.「人事異動を本人に任せるホンダ、昇進が最大目標のサムスン」(2013 7.18)——-11位
8.「企業戦略に振り回される技術者」(2013 8.8)———————————–5位
9.「サムスン移籍の理想と現実」(2013 8.22)————————————-1位
10.「部長級でも責任を取らされるサムスン」(2013 9.5)—————————–1位
11.「韓国人社員との付き合い方」(2013 9.19)————————————-7位
12.「シェア1位を奪われた原因はコストではなく慢心」(2013 10.3)——————–3位
13.「車載用電池、日本勢の強さの秘密」(2013 10.17)——————————-3位
14.「倍返しなるか、日本の電池産業」(2013 10.31)———————————4位
15.「グローバル化で遅れる日本、6つの課題」(2013 11.14)—————————1位
16.「M&Aの光と影、サムスンの事例から学ぶ」(2013 11.28)—————————6位
17.「特許マネジメントが下手な日本」(2013 12.12)———————————8位
18.「居場所を失った技術者の生き方」(2013 12.26)———————————8位
19.「サムスンのプロジェクト失敗に学ぶこと」(2014 1.16)————————6位
20.「日本とは違う、サムスン流『人付き合い』」(2014 1.30)———————-11位
21.「部下の育成より自分の昇進優先なサムスン」(2014 2.13)———————-13位
22.「白熱する電動車両開発、日本は勝てるか」(2014 3.13)———————-5位
23.「東芝事件に考える、技術流出は防げるのか」(2014 3.18)——————–6位
24.「深刻な中国大気汚染、電動車両は救世主になるのか」(2014 4.10)————-11位
25.「日本の技術力は本当に高いのか」(2014 5.22)—————————-9位
26.「学会で発表するホンダ、メモを取るサムスン」(2014 6.26)—————4位
27.「サムスンの人事と成果のあいまいな連動性」(2014 7.3)——————8位
28.「企業と流動する人材との関係」(2014 7.24) ———————— -
29.「サムスン電池事業の真剣度」(2014 8.7) ————————–12位
30.「環境自動車で日本がリードし続けるための条件」(2014 8.28) ———–7位
31.「サムスンの失速に見る日本の戦略」(2014 9.11) ———————-2位
32.「大手術のサムスン、対症療法のソニー」(2014 9.25) ——————8位
33.「中村修二氏との談話を通じて考えた日本の競争力」(2014 10.9) ———2位
34.「ノーベル賞を輩出する日本、輩出できない韓国」(2014 10.23) ———1位
35.「異業種交流イベントで感じた日本の強み」(2014 11.6) —————19位
36.「技術流出はどうやって防ぐのかを改めて考える」(2014 11.20) ——–15位
37.「エアバッグリコール問題に見る技術経営の重要性」(2014 12.11) ——–16位
38.「ナッツリターンに見る韓国財閥の影」(2014 12.25)       ——–10位
39.「エコカー世界戦争と生き残り戦略」(2015 1.8)       ——–8位
40.「トップ外交を好む韓国、実務側から進める日本」(2015 1.22)  ——– -
41.「日韓電池産業への追い風となる中国政策」(2015 2.12)  ————-13位
42.「泥沼化する韓国財閥紛争がもたらす背景」(2015 2.26)  ————-5位
43.「社長・役員の辞任におけるホンダとサムスン」(2015 3.12)  ———9位
44.「ノーベル賞の期待を背負うリチウムイオン電池」(2015 3.26)  ——-11位
45.「電動化と自動運転で変わる自動車の勢力図」(2015 4.9)  ———-9位
46.「韓国の対人関係と日本の立ち位置」(2015 4.23) —————–8位
47.「車載用電池を土俵とした日韓の熾烈な争い」(2015 5.21) ———-8位
48.「第3勢力参入で定置用電池業界の競争が激化」(2015 5.28) ———8位
49.「中小企業が技を持つ日本、企業格差が止まらない韓国」(2015 6.11) -12位
50.「中小企業に意地がある日本、大企業が支配する韓国」(2015 6.25) —13位
51.「出る杭は打たれる日本、出ないと潰される韓国」(2015 7.9) ———3位
52.「電池の国際会議に見る日本と韓国の立ち位置」(2015 7.23) ———-6位
53.「東芝事件に見る経営側の圧力、ホンダとサムスンの事例」(2015 8.6) –6位
54.「壇蜜との会話で考えた仕事術と企業戦略」(2015 8.27) ————-11位
55.「日韓電池業界に立ちはだかる中国の価格攻勢」(2015 9.10)———–13位
56.「韓国に先んじた日独連携の車載用電池認証サービス」(2015 9.24)—–12位
57.「VWが不正に至った3つの問題」(2015 10.8)————————-5位
58.「VWが受ける逆風、日本が受ける追い風」(2015 10.22)—————-4位
59.「VW、東芝の不正は企業の焦りがもたらした」(2015 11.12)————11位
60.「タカタのリコールに思う発見時の対応の重大さ」(2015 11.26)———15位
61.「2強の韓国電機業界に対抗できるか日本勢」(2015 12.10)————-11位
62.「2016年、自動車の産業競争力を展望する」(2015 12.24)————–18位
63.「動き出した中国での自動車、電池各社の投資攻防」(2016 1.7)———-9位
64.「日韓電池競合の激化に割って入る中国勢」(2016 1.21)—————20位
65.「VWスキャンダル後の欧州電動化戦略の行方」(2016 2.12)————-16位
66.「サムスン、LGの2強と対峙する日本の立ち位置」(2016 2.25)———–9位
67.「シャープ身売りで混迷するパネル業界」(2016 3.10)—————–11位
68.「シャープ問題で考える日本の産業競争力の保ち方」(2016 3.24)———8位
69.「戦略は不変ではなく随時見直してこそ生きる」(2016 4.14)————11位
70.「戦略の欠如で陥落した日本の民生用リチウム電池」(2016 4.28)———9位
71.「虚偽の科学や技術はコンプライアンス欠如が原因」(2016 5.12)———8位
72.「燃費不正事件を未然に防止する今後の抑止力」(2016 5.26)————16位
73.「サムスン移籍で実感した人材流動の重要な意味」(2016 6.9)————3位
74.「外資系で働けない人の5つの特徴」(2016 6.23)———————–5位
75.「協業の成功と失敗を分ける要素は何か?」(2016 7.14)—————-12位
76.「サムスンのBYD出資は中国市場成功への布石?」(2016 7.28)———-18位
77.「ソニー、日産の電池事業撤退の裏にあるもの」(2016 8.10)———-6位
78.「電動化、自動運転、安全機能で変わる業界勢力図」(2016 8.10)——–10位
79.「遅すぎたディスプレー産業のオールジャパン」(2016 9.8)——–17位
80.「なぜサムスンの最新スマホは爆発したのか?」(2016 9.21)——2日連続1位                                       81.「最新スマホが販売中止のサムスンに必要なこと」(2016 10.13)——–10位
82.「爆発などで大荒れの電池業界、勝敗の行方は?」(2016 10.27)———7位
83.「トヨタがEVを投入せざるを得ない事情」(2016 11.10)————–12位位
84.「選ばれるEVはどれか? テスラは生き残れるか?」」(2016 11.24)—–6位                                        85.「エコカー戦略における燃料電池車の位置づけは?」(2016 12.8)—– 12位
86.「政界、産業界が共に混乱する韓国」(2016 12.22)——————-6位
87.「2017年、エコカー開発は正念場を迎える」(2017 1.12)————-17位                                          88.「中国のエコカー政策に翻弄される日韓企業の悩み」(2017 1.26)——5位
89.「サムスンのスマホ事故を契機に揺れる電池業界」(2017 2.9)——7位
90.「国際会議で感じた欧州自動車勢の電動化への気迫」(2017 2.23)——15位
91.「サムスンに吹く大逆風はグループ再編の好機?」(2017 3.9)——16位                                                   92.「東芝、シャープなどから見る技術経営の重要性」(2017 3.23)——-6位                                        93.「中国エコカー市場で窮地に立たされる韓国企業」(2017 4.13)——3位
94.「中国政策に振り回される各社のエコカー戦略」(2017 5.11)——11位
95.「リチウムイオン電池も有機ELの二の舞か?」(2017 5.25)——–3位
96.「自動運転による自動車業界のパラダイムシフト」(2017 6.8)—– -
97.「韓国大手企業に見る日本市場の魅力と障壁」(2017 6.22)——–7位
98.「見通しが立たない東芝と絶好調サムスンの違い」(2017 7.13)—–7位
99.「電動化で先導してきた日本が自動運転で遅れ?」(2017 7.27)—–8位
100.「提携進む自動車業界、明暗見えてきた電池業界」(2017 8.10)—–6位
101.「ハイエンド偏重の日本、ローエンドも重視の韓国」(2017 8.24)—9位
102.「急加速のEVシフトに潜む5つの課題」(2017 9.14)————–1位
103.「ノーベル賞の期待がかかるリチウムイオン電池」(2017 9.28)—-3位
104.「相次ぐ法令遵守違反、未然に防ぐ3つの要件」(2017 10.12)—- 14位
105.「先行企業に神戸製鋼不正問題の防止策を学ぶ」(2017 10.26)—- 7位
106.「環境改善か下剋上か、EVシフトの先の業界勢力」(2017 11.9)—-6位
107.「政治外交まで絡めた電池業界の混乱と思惑」(2017 11.24)——12位
108.「トヨタとパナの提携で加速する次世代電池開発」(2017 12.14)—4位
109.「EVシフト下の自動車と電池業界、新規組の思惑」(2017 12.28)–10位
110.「中韓首脳会談でもかなわぬ韓国電池業界の思い」(2018 1.11)— 3位
111.「日韓で仕事観の違いはどこから生まれるのか」(2018 1.25)— 7位
112.「窮地のテスラに立ちはだかる自動車トップ」(2018 2.8)—— 4位

2018/02/08

第112回コラム

窮地のテスラに立ちはだかる自動車トップ
技術経営――日本の強み・韓国の強み
2018年から本格化する熾烈なEV競争の先は?
2018年2月8日(木)
佐藤 登

 昨年後半から、米テスラの「モデル3」が生産地獄に陥っている状態、すなわち当初の量産計画通りの生産台数には全く届かず四苦八苦している状態が報道されてきた。その中には、自動車業界の競争意識、電池業界のビジネス戦略、そして大きな投資を要求されてきた部材メーカーの悲喜こもごもが盛り込まれている。
 遡れば2017年6月に、テスラは中国の上海市に電気自動車(EV)の生産工場を建設する方向であることを報じた。その場合の条件としては現地企業との合弁が前提とされていたが、果たして順調に進んでいるのか。現在の米国における状況を考慮すれば現実性があまり感じられない。
 CEOのイーロン・マスク氏は、電動車、とりわけEVの最大市場となる中国で巨大工場を建設すると述べていた。2018年の生産キャパは中国巨大工場の稼働分も含め 全世界で年産台数50万台の計画を掲げた。現在の生産台数との乖離が大きいだけでなく、そもそもこのような大量のEVを本当に量産できるのか、根本的な問題があるのではないだろうか。
 テスラは17年3月に中国ネット大手のテンセントから5%の出資を受けている。そして、同年4月にマスク氏が訪中した際には汪洋副首相と会談したとされている。もともとテスラは14年に中国市場に参入した。その後の16年には15年の3倍以上の売上高を記録した。米国からの輸出のため、関税と輸送費が課せられる格好であったが一大ブームを巻き起こしたことになる。だが、一定数が市場に出回った後には飽和感が漂い、頭打ちになったことも記憶に新しい。
 そのような中で、米国からの輸出よりも中国での現地生産に踏み切れば相応のメリットが出ると言う試算は正しい。だが、そこには想定外の誤算があったようだ。それは、35万台のバックオーダーを抱えていると言いながらも、それに見合った量産技術と生産体制の整備が進んでいないままでの生産をしているような実態だ。すなわち、本格的な生産技術が伴っていないという欠陥である。
 米国ネバダ工場だけでの量産台数としては週5000台ペースの生産を計画してスタートしたのだが、生産地獄に至ったことで17年7月に発売開始した直後には、その生産計画を17年末までと一旦延期した。さらに1月に入ると達成時期を18年4~6月期までと2度目の延期をアナウンスした。

テスラが陥っている罠
 2017年の第3四半期こそ売上高は前年同期比で8%増加したと言うが、1~9月間の営業損失は売上高の11.5%に達したとのこと。象徴するように、17年12月上旬の日本経済新聞の夕刊には、「テスラ暗雲、冷める投資家」というタイトルの記事が掲載された。
 それによれば、17年7月に出荷を開始した量産型EV「モデル3」の生産が計画を大幅に下回っていることが株価に大きく影響したという。17年7月から9月期までの「モデル3」の生産台数は当初計画であった1300台の2割に留まり、260台しか生産できなかったとのこと。しかも納車先は社員または会社関係者にのみだったという。
 17年9月18日に上場来最高値の389ドルを付けた株価は、そういう状況が影響して後に下降を続け、12月8日には最高値から20%を下げた。「モデル3」発表と同時にバックオーダーが35万台に達したと話題になったテスラだが、明らかに量産体制の脆弱さが露呈している。17年10月から販売が開始された日産の新型EV「リーフ」が現在抱える1万6千台、そして仏ルノーのEV「ZOE」が抱える3万台規模(ルノーの知人談)に比べれば、テスラへの期待感がいかに大きかったかは想像に難くない。
 先の日経新聞によれば、テスラの財務は火の車とのこと。時価総額で米ゼネラルモーターズ(GM)やフォード・モーターを超えたと話題になったものの、実態とは大きな乖離があるようだ。17年7月から9月まで1年間のキャッシュフローは約5500億円の赤字、しかも16年12月通期の3倍にまで膨らんだというから火の車と言う比喩が妥当だ。
 決算における巨額の赤字体質に対する補填と設備投資に対する資金は、増資と社債でやりくりしている模様である。17年9月時点での手元資金は4000億円規模であるようだが、一方、負債額は1兆1000億円程度を抱えていると見られている。返済に追われる現状での打開策は、そう簡単ではないように映る。
 現在抱えているバックオーダーは、いつになったら全車納車になり得るのか、現状を踏まえると数年はかかる計算になる。一方、本年から米国ゼロエミッション自動車(ZEV)規制が急激に強化され、19年からは中国の新エネルギー自動車(NEV)規制が待ち構える。そして21年からは欧州におけるCO2規制が発効することで、世界の自動車各社は否が応でも電動化シフトを実行しなければならない。

日米欧の電動化戦略
 これを議論すると、ますますテスラは窮地に追い込まれると筆者は予測するが、同じ意見を有す読者の方々も少なくないのではと察したい。
 先週の1月29日から2月1日までの4日間、ドイツ・マインツで自動車の電動化と車載用電池に関する国際会議「AABC(Advanced Automotive Battery Conference) Europe 2017」が開催され、筆者も参加した。予想はしていたというものの驚いたことはまず、昨年の700人規模の参加者が一気に1000人を超えたこと。欧州で開催された本会議の参加者急増加が、欧州自動車業界を始めとする電動化シフトが現実的なものとなってきたことの証しでもある。
 これまでも欧州勢、特にドイツ勢のダイムラー、BMW、そしてフォルクスワーゲン(VW)が数兆円規模の投資を図り電動化へのかじ取りを行っていることは報道されてきたが、その気迫を実感できる良い機会であった。そこにはドイツ勢のみならず、ルノーの電動化に対する積極的な戦略も発信され、まさに欧州で進んでいるEVシフトは言葉だけではない実態が伴う本格的なムーブメントである。
①欧州勢の電動化へのかじ取り
 2015年に発覚したVWのディーゼル燃費スキャンダルが引き金となり、加えてドイツのメルケル首相が発信した将来的なディーゼル車の排除が重なり、ドイツの自動車各社はリベンジの意味も込めつつ電動化には極めて積極的である。リップサービスで建前論的と、周囲には疑問視する意見もあるようだが、現在の各社の取り組み姿勢を考えれば、決して一時凌ぎの発言とは思えない。
 ドイツ勢各社による開発投資計画、車種数の具体的発信、日本人エキスパートの積極的人材活用、電池各社に対する求心力の増大――これを裏付ける事例は山ほどある。
 ドイツ勢もフランス勢も昨今、車載電池に対する考え方を大幅に変えてきた。従来、電池は調達部品の1つとしてしか考えていなかった各社は、電池パックシステムをボッシュのようなTier1に委ねる戦略を推進してきたが、それでは競争力や差別化を図れないと漸く気付いた。電池セル単体は調達戦略のもとで受け入れるが、それ以降のモジュール化から制御システムまで包含した電池パックシステムを自社内での自前化にシフトさせている戦略に方向転換した。
 更なる裏付けの1つは、韓国トップ3の欧州拠点構築の動きだ。ポーランドでいち早くリチウムイオン電池(LIB)の生産拠点を構えた韓国LG化学は、第一次の400億円規模投資を終え2017年後半から生産を開始した。今後、さらなる第二次投資計画を進めようとしている。サムスンSDIはハンガリーに400億円規模の投資にてLIB生産拠点を作り、本年中の稼働を目標にしている。
 そして韓国の第3勢力であるSKイノベーションはハンガリーに、850億円を投資し生産拠点を構え、2020年の稼働を目指すと言う。韓国のトップ3の電池メーカーが欧州に拠点を構え、しかも巨額投資を行うという同じベクトル化にあるということをどう考えるべきか。
 筆者がサムスンSDIに在籍していた経験から類推するに、マーケティング活動が日本勢より数倍積極的な韓国勢が、当てもなく巨額投資するはずはない。それには電池各社の十分な算段があるはずで、供給契約と言わずとも、それなりの可能性にかけている節がある。
②米国勢の電動化へのかじ取り
 GMもフォードも、ZEV規制、そして中国市場での展開もしたたかな戦略を進めている。欧州勢ほど大々的なEVシフトをしてこなかったのは、欧州勢がディーゼルスキャンダルの解決策で大々的に発信したスタンスとは異なり、じっくり練った戦略を打ち出しているためである。テスラのEV事業とは一線を画し、むしろ自動車の歴史を牽引してきた米国トップ企業の余裕すら感じる。両社にとって、テスラは気にはなるが大きな脅威とは感じていないようだ。
③日本勢の電動化へのかじ取り
 日本勢はまた特有の戦略を有している。特にトヨタとホンダには強力なハイブリッド車(HEV)があるからだ。日本ではもちろん、最近では欧州でも、そして中国でもHEVの販売が伸びていることが象徴している。
 ZEV規制、NEV規制においてHEVはクレジットにカウントされるカテゴリーから排除されている。しかし、そのHEVが日本ではもちろん、欧州、そして中国で販売を拡大している事実は何であろうか?
 取りも直さず、消費者にとってHEVが魅力ある製品であることに違いはないからである。ZEV規制もNEV規制でも、トヨタとホンダのみが勝ち組であるHEVであるからこそ、各規制でのHEV排除が行われたこと。一方では、HEVが燃料節減や充電器設備投資が不要なる商品であることから使い勝手の良い電動車として認知を得ていることに他ならない。そういう日本のトップ2でも、いざEVの商品化を実現する段階では、トヨタもホンダもEVは個社のプライドをかけて発信して来るはずだ。

テスラの行方は?
 以上のように、量産技術を得意とする日米欧の自動車各社の姿勢は、現在テスラが抱える病とは無縁な状況下にある。
 前述した世界のトップブランドメーカーがEVシフトに立ち向かうことで、テスラの行方にも大きな影響を及ぼすことは間違いないだろう。今回のAABC国際会議に参加していた日本人、部材メーカー、電池メーカー、調査会社、コンサル会社の知人達と筆者を含む8人は、会食会の場で今後のテスラの行方を占った。
 そもそも大量生産をしたことがないテスラが、一気に50万台規模の量産を具現化するのは困難で、数年の時間はかかるはず。「モデルS」のような尖った高級路線での存在感はそれなりにあるが、「モデル3」のような普及車カテゴリーでは、真っ向から世界の名だたる自動車各社のEVと直接比較される。そこではテスラの選択肢や存在感は大きなものではなく、むしろトップブランドのEVの方が安全性や信頼性で消費者の関心を惹くだろうと。
 そして、現在の生産地獄が長引けば長引くほどキャッシュフローの改善は見込めず、経営はもっと窮地に陥るはず。シナリオとしてありうるのは、17年春にGMの時価総額を超えたテスラだけに、それを武器に中国企業に売却することだ。生産地獄から逃れる短絡的な解決方法の手段のひとつのような気がする。

2018/01/25

第111回コラム

日韓で仕事観の違いはどこから生まれるのか

技術経営――日本の強み・韓国の強み

人材が活躍できる5つの施策を

2018年1月25日(木)

佐藤 登

 2017年、サムスン電子はメモリー半導体の好況などにより、半導体の売上高が約6兆9000億円と過去最高の業績を達成した。その結果、世界の半導体業界を24年間にわたって支配してきた米インテルを売上高で抜き、半導体業界トップにまで躍進した。その対価として、半導体事業に従事する社員には基本給の400%の成果給が支払われたとのこと。成果給の規模感は日本では考えられないレベルである。

 しかしこの領域のビジネスは、半導体サイクル、あるいはシリコンサイクルとも称されるがゆえに、好況が続くという保証はない。そういう状況でも、サムスンは世界で先行し、最新技術を持つことで、価格競争に陥らないビジネス戦略を率先していることが功を奏している。

 例えば、韓国京畿道華城市にある最新鋭の第12工場。朝鮮日報によれば、ここには高価な半導体製造設備がびっしりと並んでいるという。天井にはウエハーを24枚ずつ積んだ円筒型のウエハーの格納容器(フープ)数千台がつり下げられ、列を成して動いているとのこと。このウエハーが、1カ月の期間に渡って500を超える工程を経て、スマホやノートパソコンなどIT機器に使用されるNAND型フラッシュメモリーとなる。

 華城市と言えば、サムスン電子の半導体工場が林立する拠点の代表格だ。筆者が2004年から2009年までの5年間、サムスンSDIの中央研究所に勤務していた京畿道ギフンおよび水原市からも近く、この一帯はサムスン城下町となっている。華城事業所の敷地規模は157万平方メートルにおよび、7カ所の工場でNAND型フラッシュメモリーとDRAMが24時間生産されているという。従業員は生産ラインの外部から遠隔によりシステムを操作しているだけで、完全自動化が図られているとのことだ。

 遡れば筆者がサムスンSDIに在籍中の2012年9月上旬のこと、トヨタ自動車副会長から日野自動車会長に移られていた岡本一雄氏を、サムスングループの視察にお招きし同行した。トヨタ自動車の副会長時代から、岡本氏とは懇意にさせていただいた経緯があったからだ。そのつながりがあって、トヨタ自動車本社、およびデンソー本社でのサムスングループの大々的な製品展示会が可能となった。トップ協議の末、わずか4カ月間の短い期準備期間で実施させていただいた。そのお礼的イベントとしての視察であった。

 ギフンの半導体最新工場と有機EL(エレクトロルミネセンス)、リチウムイオン電池等の工場をご覧いただいたが、当時でも半導体と有機EL工場は特別機密体制を敷いていた。岡本会長の視察時にも、同じサムスングループ役員である筆者にさえ制限がかけられ、半導体と有機ELの視察はままならなかったほど。それだけ、世界をリードする最新設備を有した工場であることの証しであった。

 サムスンは最新鋭の工場を持つだけではなく、研究設備の投資にも積極的だ。2017年4月には、華城事業所の近くにデバイス・ソリューション・リサーチ(DSR)研究所が完成したとのこと。1万5000人の社員のうち、修士号と博士号をもつ研究者1万3000人ほどが勤務しているという。サムスン電子は最近、データの書き込み、読み出し速度が早い磁気抵抗メモリー(MRAM)と称される次世代半導体、さらにはグラフェンや黒リンなどの新素材を適用する半導体開発にも力を入れており、そこに関わる人材を積極的に採用している模様だ。

リスクあっても就職で人気のサムスン

 このように、成果給の支給や研究開発環境の充実と最先端研究の推進、さらには昇進につながる成果主義は、サムスンの人材に対する求心力の大きさを示しているといえる。

 2009年9月、筆者はサムスンSDI中央研究所から本社経営戦略部門に異動と同時に、東京・六本木に逆駐在の形で勤務することになった。その直後に、サムスングループでは2020年の成長戦略を描き始めた。事の発端は、イ・ゴンヒ会長が「10年後のサムスンに既存事業は残っていないと思い戦略を考えろ!」と言うメッセージを掲げ、グループをあげて成長戦略を描くことになったからである。

 その時点で、エネルギー事業とヘルスケア事業を成長させる戦略を描き、「バイオ医薬」、「医療機器」、「車載用リチウムイオン電池(LIB)」、「LED」、「太陽電池」の5テーマを策定した。結果として現在は、ヘルスケア部門は成果を出しつつある一方、LEDは成長軌道を描けず失敗、太陽電池は競争力がないことで事業撤退となっている。

 一方、信賞必罰のサムスンは有名だ。成果を出せばインセンティブが与えられる。その成果が大きいほどインセンティブも大きくなる。リーダーとして貢献したならば、昇進も極めて早くなる。役員任用の平均年齢は47歳ほどであるが、30歳代の役員任用も珍しくなくなってきた。それだけダイナミックな人事や報酬制度が存在する。

 それがあるから、韓国の民間企業の中でサムスングループの就職人気度は抜群だ。また、世界各国から人材を集める力をも持つ。終身雇用でもなければ、組合も無い。事業が上手く推進されなければ事業撤退から解雇に至るケースも少なくない。しかし、そんなリスクも抱えながらも求心力があるのは、そういうリスクよりも魅力の方が上回るからだろう。

 しかし逆もダイナミックだ。成果を出せなければ、社員はともかく役員は責任を問われる。失敗は言うに及ばず、成果がないだけでその責任は大きい。50歳未満で役員に任用されても、その後の2年程の間に成果を見せなければ生き残れない。在籍中に筆者は、50歳前後でクビになる役員の現場と現実を多く見てきた。役員解任の詳細な理由は説明されないケースがほとんどだが、当事者としてもその判断がどこにあるのかは自ずとわかるようだ。

人材集めに苦労する日本

 その後、サムスングループの成長戦略事業は2016年に再見直しをかけた。サムスングループ製品展示会開催を発端に、「自動車電装事業」、それに「インターネット・オブ・シングズ(IoT)」、「人工知能(AI)」の3テーマを追加した。いずれも、現在の時流に乗り遅れないようスピーディな判断を下した。今や、この3テーマに絡む人材確保を精力的に進めている。

 日本企業も現在はIoTやAI分野で人材確保に躍起になっている。自動車業界では特に自動運転の研究開発分野で重要な人材となっている。AI人材は売り手市場で争奪戦が続く。IoTやAIを主力とする企業やベンチャーも人材確保のために奔走しているが、絶対的な人数が不足とのこと。本格的なスキルを持っていなくても、少しかじった程度の人材でも迎え入れるほどと聞いている。

 2017年11月、京都に本社がある電機メーカーを訪問した際、ホンダ出身の役員で筆者の知人が語っていた。「有力大学に人材の就職依頼に詣でても、グーグル、アップル、マイクロソフトなどの外資企業が提示する初任給と比較されてしまうと競合できない。そうかといって、社内規定を超えての特別採用もできず何ともかみ合わない」と嘆いていた。これが日本企業の縮図であろう。

 結局、日本企業の場合は定められた規定があることで、外資や外資系日本企業との人材争奪戦になれば不利になる。もともとスカウト文化がなかった製造業では、人材確保のための強力な武器がないことでじり貧だ。

 それを象徴するように、1月22日の日本経済新聞の1面トップに、「日本の賃金、世界に見劣り」と紹介された。日系企業の給与水準は欧米のみならず、アジア各国に抜かれているという。例えば2017年に、中国の通信大手の華為技術(ファーウエイ)は日本国内の新卒採用で、ソニーなどの電機大手の2倍近い水準を提示したとのこと。

 これからの日本企業もグローバル戦略はますます重要になる。人材確保のためのグローバル戦略も例外ではない。人材流動、人材スカウト、働き方改革など、日本企業としては多方面に課題を残す。

 筆者がさまざまな企業人、とりわけ40歳代までの若手と意見交換する際に必ずと言ってよいほど尋ねるのは、「仕事は楽しいですか?」ということだ。勤務時間が長くても、給与が相対的に低くても、楽しく仕事ができていれば、それは企業と個人のマッチングがとれていることになるので、わかりやすい質問だ。

 逆に、各種条件が他業界や他企業と比べて相対的に見劣りせずとも、仕事を楽しんでいない群も少なからず見ている。リストラ等で自身の関わっていた仕事と全く無関係領域での仕事を与えられたことによるストレス、あるいは上下関係のコミュニケーション不足による考え方の乖離によるストレス、上司や経営層の独走で誤った方向に進んでいるところに巻き込まれるストレスなど、その背景には様々な要因がある。現代は、そのようなネガティブな因子を払しょくするための企業としての在り方、個人としての行動のとり方が、特に求められているように思う。その打開策には以下の5つのようなものがあるだろう。

人材が活躍できる企業制度改革

①人材流動が起きやすい企業環境創り

 人材が流動しやすい社会を創ることは不可欠だ。企業と個人のマッチングを促すためには、各企業自体がそのような環境を整える必要がある。筆者がサムスンに移籍した2004年に比べると、日本でもそのような環境ができつつあるように見えるが、欧米や韓国企業に比べるとまだ10分の1くらいかと映る。

 ホンダ時代の筆者の部下は現在、トヨタ自動車で勤務しているが、彼の処遇を見てみると、きちんと評価して重要な役職を任せ、人材に対して求心力を高めている。所属した企業と個人のマッチングが図れて、あるいは図るような施策で企業が人材を留める求心力の向上は、より重要な施策であることに違いはない。

②成果に対する報酬制度や昇進人事の改革

 成果を出しても出さなくても報酬や昇進であまり差を付けないのが日本流のようである。日系企業以外では考えられない慣習だ。それだけに、現在の学生から見た外資系企業との見劣りは明らかだ。もちろん、その日本流的慣習をすべて否定するわけではないが。

 適正な差を付けることが本来の公平感である。日本企業が辿ってきた高度成長期時代の大量生産によって発展してきた製造業では、異質な人材や尖った人材を囲い込めてこなかった。負の遺産のように思えるこのような前近代的文化から脱却しないと、今後の人材確保において苦戦することになるだろう。

③人材を積極的にスカウトする文化を

 この文化が薄っぺらであるから、特に外部人材や外国籍人材を求めようとすると、ネックになる場合が多い。どうしても必要とする人材には、それ相応の処遇は必要になってくるだろう。働き方改革と連動するこのような人事制度改革、企業文化改革も必要ではないか。

個人としての意識改革

④ビジネスマッチングが図れない際の行動指針

 定期採用であれ中途採用であれ、企業の実態はその中に飛び込み、仕事をしてみなければわからない。「こんなはずではなかった。」と言う声も良く聞く話だ。悩み抜いて考え抜いても打開策が見出せなければ、何もそこに踏みとどまることはない。そうしないと心の病にかかることも必定。ただし、せめて何らかの成果を出してキャリアを上積みすることは必要かと。

 ホンダの創業者である本田宗一郎は名言を残した。「会社のためではなく自分のために働け!」「信念をもって仕事しろ。しかし信念は往々にして逆風を招く。それでも信念をもって仕事をしていたら、ホンダで駄目でも外から声がかかる!」と。楽しく仕事をするためには信念が必要とも言えるだろう。

 筆者もその一人であるが、信念の大事さをホンダで実感した。2013年8月22日の本コラム「サムスン移籍の理想と現実、生き残るには覚悟が必要だ」に、筆者の実例を記述したところ、多くのアクセスをいただいた。他方、外から声がかからずとも、起業するという選択肢もあるだろう。

⑤心を病む働き方からの脱却

 仕事ができなくなる、出社できない、鬱病を発す、自殺にまで追い込まれるという光景は、日本が先進諸国の中で突出している。欧米企業、サムスンなどの韓国企業では、そうなる前に自身の処し方を真っ先に考える。むしろ、機会到来と思えば積極的に転身する。だからこそサムスンでは、心を病みながら会社にしがみついている人物を見つけることはできないのである。

 企業の方針や戦略、あるいは処遇にマッチングを図れない場合、自らが自分の環境を変えるくらいの胆力を鍛えておくことは必要であろう。しかし、行動指針としての一丁目一番地としては、企業が個人に対して面倒を見てくれることへの期待感を考えるより、企業に対して自らが如何に貢献できるか、そのためには何をなすべきか、そしてその行動と成果を自身のキャリアとして蓄積できるかを、まず先に考え行動することであろう。

 以上、改めて「仕事の在り方、進め方」について考えてみた。

2018/01/11

第110回コラム

中韓首脳会談でもかなわぬ韓国電池業界の思い
技術経営――日本の強み・韓国の強み
ホワイトリストという罠、日本電池産業界への影響は?
2018年1月11日(木)
佐藤 登

 新年おめでとうございます。本年も、お付き合いのほど宜しくお願い致します。
 中国では、 エコカーとして補助金を受けるためには、搭載した電池がホワイトリスト登録企業から供給されていることが義務付けられている。2017年11月24日の本コラム、「政治外交まで絡めた電池業界の混乱と思惑」の中で、ホワイトリストに関して、以下のように記述した。
 「中国のホワイトリストには、韓国勢のサムスンSDIもLG化学も認定されていない。韓国の高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備によって、政治的圧力がかかり~中略~。韓国側もその状況に甘んじているだけではないようだ。政治的圧力に対しては政治的解決を図ろうとする動きがあると、韓国の報道機関であるハンギョレが明らかにしている。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が11月13日に、中国の李克強首相に対して、「ホワイトリスト」対象外となっている韓国2社の認可要求をしたとのこと~中略~。それに連動して、両国の実務級が、本問題を協議していたことを確認したとの報道もある。12月に開かれる中韓首脳会談以前に、互いの関係修復を図る目的で両国がこの問題を協議したということは、好転する可能性も出てきたと言えるかもしれない。12月の中韓首脳会議を注目したい」。
 果たしてその結果はどうだったのか? 1月8日の朝鮮日報によると、12月の中韓首脳会談で両国政府はTHAAD配備による対立を解決することで合意したものの、韓国製の車載用電池に対する差別が依然続いているとのことで、トップ会談の中でも解決策は見出されなかったようだ。
 経緯を遡れば、韓国政府は2016年7月にTHAAD配備を決定した。論争が本格化したのは同年12月だったとのこと。中国政府が補助金支給対象の電気自動車(EV)リストを12月29日に発表した際、当日午前には韓国メーカーのリチウムイオン電池(LIB)を搭載した5車種が含まれていたという。しかし、その午後に5車種を削除した修正リストが発表されたとのこと。LG化学、サムスンSDIのLIBを搭載した東風汽車の4トンEVトラック、陝西汽車の6トンEVトラックがリストから削除された。
 一方で、EVリストを中国政府がわずか半日で覆した12月29日には、中国外務省で THAAD問題を担当していた陳海アジア太平洋局副局長が訪韓していたという。結局、同日に中国工業情報省が発表した「第12次エコカー補助金支給目録」に、韓国製LIBを採用したEVが全く含まれなかったとのこと。このため、中国政府がTHAAD配備に対する報復として、韓国メーカーを差別していると判断された。それ以降、韓国メーカーのLIBを採用したEVは一度もリストに含まれていないし、それは今も続いている。
 中国ではEVの価格の最大半分まで補助金が支給される。これまで補助金詐欺が横行したのも、補助金額の大きさが極めて魅力的であったからだろう。ともかく、補助金なしでは現実的にEV販売は困難だ。すなわち、補助金支給対象から外れた韓国製LIBを使っていては、そのEVに消費者の関心は向かない。2017年初めには具体的な事例が生じた。北京現代汽車が中国で発売を予定していた「ソナタ」のプラグインハイブリッド車(PHV)には、当初、LG化学製のLIBを搭載予定でいたが、急遽、中国CATL製に変更したという事実で裏付けられている。
 またLIBの材料技術に対しての制限も特異な政策であった。中国政府は2016年1月、正極にニッケル・コバルト・マンガンを主原料とする三元系NCMのLIBを適用した電動車を補助金支給対象から除外した。
 というのも15年12月、香港でEVバスが火災を起こしたことが発端になった模様だ。このバスには、NCMを用いたLIBが採用されていたことが理由とのことでNCMが悪者扱いされたからだ。日本と韓国のメーカーが主に製造・供給しているNCMは、中国では製造技術難度が高く、中国側にとっては邪魔な存在であった。それだけに、この火災事故は補助金対象から除外するにはうってつけの口実となった。これに対し、中国メーカーはリン酸鉄リチウム(LFP)を容易に製造・供給が可能であったことで、正極にLFPを使用するLFPシフトが一気に進んだ。
 しかし、性能面ではLFPを上回るNCMに対し、中国メーカーがNCM正極への投資を拡大し、品質水準が向上したとのことから、中国当局が態度を変えた。その結果、中国政府はその1年後に、NCM正極のLIBに対して補助金支給制限措置を撤回した。
 ところがここ最近、中国電池業界における動向として、NCMからLFPへまた戻りつつあるとも。性能が安定したNCMの製造供給が、なかなか思うように進んでいないようである。すなわち、方向が定まらない中での揺り戻しの激しさを物語っている。結果、外資系自動車業界はもとより、電池業界や部材業界までも投資戦略やビジネスモデルで翻弄されているのが実態だ。
 中国市場を中心としたEVシフトは、中国産業界を保護するためのみえみえの策であるからこそ、中国側の政策にどのように対峙していくのか、外資系自動車各社や電池各社にとって大きな試練となっている。

日本への影響と対応策
 日産自動車とNECの合弁企業であるオートモーティブエナジーサプライ(AESC)は、2017年後半に補助金対象リストに含まれたとのこと。AESCに至っては、中国のファンド企業GSRに同年9月に買収され、NECエナジーデバイスも同様に同社に取り込まれた。したがって、AESCとNECエナジーデバイスの技術は中国産と言う構図になり、一方で中国大連にある外資のパナソニックはリストから脱落した模様だ。中国政府の立場から見れば、技術は揃ってこれで十分と言うことであるから、パナソニックを排除したということが事実であれば、あからさまな政策方針である。
 パナソニックがリストから除外され、今後もこの状況が続けばトヨタとホンダには逆風が吹く。大連のパナソニックLIB生産工場の最大顧客は、トヨタとホンダであり、両社の電動車に対するLIBの供給にほかならないからだ。リストに入っていないパナソニックのLIBを両社のPHVやEVに搭載しても、補助金を受けられなければ競合他社との価格差は歴然となり、ビジネスとしては成立しない。そうなれば、日系自動車メーカーと言えども、中国ローカルメーカーのLIBを調達せざるを得ないという制約を被る。
 中国の新エネルギー自動車(NEV)規制ではハイブリッド車(HV)は補助金対象外となっていることから、補助金取得を最初から当てにしないHVビジネスでは、両社にとって自立感はある。しかし、PHVやEVを中国市場に供給しなければならない制約を受ける両社にとっては、LIB調達戦略は今の所、頭痛の種であろう。
 2017年にホンダは、中国において18年からEVを市販する計画を発信した。取りも直さず、中国のNEV規制を鑑みた結果であったのだが、このEVに供給されるLIBは中国ローカルメーカーのものである。
 その点、日産のLIB調達戦略はハードルが低い。もともとAESCのLIBを適用し続けてきた同社にとって、中国企業となったAESC、しかもホワイトリストに登録されたAESCからLIBを調達すれば、これまでのビジネスモデルと何ら変わりがないことになる。
 2017年12月13日に、トヨタとパナソニック間での車載用電池に関する強力な提携関係がアナウンスされた。パナソニックを、15年にセカンドベンダーとして選択したホンダにとっては、いささか不安さが付きまとうことになる。
 この両者間の提携関係はホンダ以上に、中国側にとって不愉快な関係と映っているかも知れない。両社の強力な提携関係を維持しつつ、中国でのNEV規制に対して強いビジネスモデルで推進できれば、ローカル産業を優位な方向に導こうとする中国政策にとっては大きな壁となって立ちはだかる。と考えれば、AESCを中国側に引き込んだ実績を背景に、パナソニックを意地でもホワイトリストに登録させないなどということになるかも知れないと思うのは老婆心だろうか。

次世代革新電池で巻き返しを図るサムスン
 車載用LIBビジネスではLG化学の後塵を拝しているサムスンSDIであるが、グループとしても車載用LIB事業は成長戦略と掲げているサムスンにとっては、いろいろな戦略を展開しなければならない。
 モバイル用LIB事業では、サムスンSDIが2004年以降に大きな存在感を示し、業界トップに上り詰めたことは、LG化学にとっては屈辱でもあった。それだけに、車載用LIB事業ではLG化学の意気込みはサムスンSDIを上回っていた。その結果、欧米韓の自動車各社とのビジネス協業は、サムスンSDIのそれより一歩も二歩も前を走る。
 それを目の当たりにするサムスンSDIにとっては、先行するLG化学の他にも、第三勢力として台頭しつつあるSKイノベーション(SKI)の背後から迫る足音を聞くに、勝てるシナリオ創りが重要となる。サムスングループにとっては、グループの総力を挙げた闘いに臨む意気込みがある。その矛先は、次世代革新電池という位置づけのように映る。メディアへの発信は、他社を圧倒するほど意識的に展開している。
 トヨタをはじめとする全固体電池の研究開発は、今や全世界的な競争段階に入っている。サムスングループでは、大阪に拠点があるサムスン日本研究所で推進されている。モバイル用途ではなく、車載用途での実現を目指しての研究開発が活発であり、LG化学やSKIの先を走っている状況にある。
 また、もうひとつの可能性としてのリチウム空気電池については、サムスン電子の基礎研究機能を担うサムスン総合技術院(SAIT)で展開されている。具現化の可能性はともかくとしても、このように研究所機能ごとに対象とする研究開発テーマを住み分けて効率的、かつ効果的に進めていること自体に気迫は感じられる。
 しかし、企業や大学、研究機関の研究開発推進力を比較すれば、韓国よりも日本の層に厚みがあるようだ。LG化学に対するサムスンの競争意識もさることながら、日本勢としては次世代革新電池の主導権を取れなければ、今後の日本電池産業の競争力確保に結びつかない。その場合、半導体、太陽電池、液晶、家電、有機エレクトロルミネッセンス(EL)の二の舞になる道をたどることになろう。
 電池業界にとっては、足元のLIB事業での投資や技術開発、ビジネス確保、そして次世代革新電池への取り組み戦略と、相互のバランスをいかに上手く進められるかにかかる。勝ち残れる企業戦略を打ち出し、実現に漕ぎ着けられる企業こそが今後生き残れることになるだろう。

2017/12/28

第109回コラム

EVシフト下の自動車と電池業界、新規組の思惑
技術経営――日本の強み・韓国の強み
次世代革新電池の実用化以前に戦いの場が
2017年12月28日(木)
佐藤 登

EVシフトは止まらない(2017年春の上海モーターショーで展示されたVWのEV「I.D.Crozz」、写真:Imaginechina/アフロ)
 12月14日のコラム、「トヨタとパナの提携で加速する次世代電池開発」に関しては、読者の支持率を96%もいただき、発信した筆者としても、お陰様で満足感を得た。それだけこの内容が、自動車業界や電池業界、そして部材業界に大きく影響することとして伝わったのだろう。
 同コラムでは、2020年以降の実用化が期待される全固体電池を中心に記述したのだが、全固体電池が実用になったとしても、すぐに現在の液系リチウムイオン電池(LIB)が置き換えられることにはならない。言い換えれば、現在進んでいるEVシフトに連動したLIB事業の競争力強化が、当面の間、ますます問われることになる。

車載電池事業を拡大するドイツ自動車メーカー
 ドイツ勢のダイムラー、BMW、フォルクスワーゲン(VW)には、2018年から米国カリフォルニア州が制定しているゼロエミッション(ZEV)規制が課せられる。一方で、ドイツのメルケル首相が「優れた工業製品が多々あるにもかかわらず、電池産業がないのはドイツの憂鬱」と発しているように、ドイツにはモバイル用から車載用に至るまで、グローバルに闘える電池企業がない。2000年以前には、ニッケル水素電池をビジネスとするVARTAという企業があったものの、今はその影もない。
 そのような中、ドイツの自動車業界は車載用電池に対する考え方を変えてきている。2~3年前までは、調達コンポーネントの1つという位置づけであった。すなわち、セル調達から電池システムに至るまで、独ボッシュなどのTier1に任せるスタンスを基本としていた。
 しかしここ数年、電池システムはEVシフトにおける重要な戦略コンポーネントと認識しだした。中でも、ダイムラーはバッテリーモジュール(電池セル単位のブロック集合体)から電池パック、そして電池制御システムまで含めた電池パックシステムの内製化に舵を切った。2016年には独ACCUMOTIVEを子会社化してグループ傘下に収め、ビジネスモデルを構築した。
 但し、セルの開発や製造は行わず、セル自体は韓国SKイノベーション(SKI)や日本のリチウムエナジー ジャパン(GSユアサコーポレーション、三菱商事、三菱自動車の合弁)から調達している。セルはこのように、アウトソーシングとし、しかも複数購買というスタンスでコストを競わせる。当面は、このようなビジネスモデルで進めるようだ。
 電池に関する知見を有するダイムラージャパンの知人である若手エンジニア(日産自動車出身)は、本年3月にダイムラー本社があるシュトットガルトの研究開発センターに異動となった。電池研究開発に造詣が深い人材が少なく、人材の強化を図る目的で、急遽、本部に招聘された格好だ。
 筆者は日本能率協会主催のテクノフロンティアの中の「バッテリー技術シンポジウム」の委員を2015年から務めている。EVシフトの筆頭の一角をなすダイムラーに所属する彼を、18年4月に開催される当シンポジウムの講師として招くこととした。きっと、ドイツのEVシフトに対する真剣な取り組みと考え方を披露してくれることになるはずだ。
 もう一つの雄であるBMWは、ダイムラーと同様にセルはアウトソーシング、モジュール以降から電池パックシステムまでは自社内で開発している。2013年に発売したEV「i3」、およびプラグインハイブリッド車(PHV)「i8」に関して、セルは韓国サムスンSDIから調達している。最近は、中国CATLからの調達契約を交わし、サムスンSDIとの性能および価格を競わせる戦略を構築した。
 そして同社は2019年の稼働を目標に、電池材料研究センターを創設する準備を開始した。電池研究開発の一環として、素材・部材技術に関する知見を向上する目的で機能させるとのことで、筆者の知人である日本人の若手エンジニアが、ここでも活躍する機会となるようだ。しかしそれでも、セル事業までは当面事業化する計画はなく、電池メーカーと対等な議論ができること、および電池メーカーに素材・部材の観点から提案できるビジネスができることを目標にする機能のようだ。セル自体は複数調達で戦略的に展開する模様である。
 日本の自動車各社と電池各社は国内の近い所で協業し、特に車載電池の合弁会社を設立してきた関係がある。一方で、ドイツ勢の自動車各社にとっては国内あるいは近隣に強い電池各社が存在していないことで、日本とのビジネスモデルは異なるスタンスをとる。
 VWに至っても、電池調達関係で2025年までに6兆5千億円を投資するという遠大な展望を表明している。これは、電池業界に対する大きなメッセージであり、LIB供給ビジネスのチャンスであることを鼓舞すると共に、性能と価格を競わせようとする大きな戦略が見え隠れする。
 VWは中国に関するビジネスに殊更思い入れが強い。中国市場でのVWのブランドは他の外国勢よりも強いだけに、中国政府が推し進める2019年発効のNEV(新エネルギー自動車)規制に対し実力を示した。中国政府が認定するエコカーライセンス、すなわちエコカー製造認証において、VWと中国のJACが合弁で設立したVW-JACが、15番目の企業として認可されたからである。外資としては初めてだ。同時に、VWの勢いはCATLとの合弁を模索するなど、ダイムラーやBMWよりも中国でのビジネス戦略は積極果敢だ。

大投資で欧州市場を囲い込む韓国電池業界
 中国政府の介入により、中国でのビジネスが空回りしているサムスンSDIとLG化学は矛先を欧州に向けた。同様に、電池事業戦略を急拡大しているSKIも、前二者の動きを勘案しつつ、欧州展開を一気呵成にしかける。
 中でもLG化学の欧州進出は早かった。約400億円を投じ、ポーランドでLIB工場を本年末に稼働させた。今後も継続投資により、生産キャパの拡大を図る。サムスンSDIも同規模の投資で、ハンガリーにLIB工場を建設し、2018年の稼働を目標として顧客開拓を図る。
 この両者の間に割り込むかのように、SKIはハンガリーに拠点を構えることを決断した。もっとも、韓国瑞山(ソサン)にあるLIB工場の生産キャパは1.1GWhであったが、更に200億円を投じて18年下半期には3.9GWhまで拡大する計画である。そしてハンガリーに約840億円を投じ、7.5GWhのLIB工場を建設するとのこと。欧州のEVシフトが本格化する2020年の稼働を目指すというが、完成すれば欧州最大のLIB工場となる。総額1000億円超の大投資を敢行する。
 LIB生産工場がない欧州市場の隙間を縫って、人件費の安いポーランドやハンガリーでセル生産をふんだんに行い、日本や中国の電池事業に対し主導権を握る戦略に出ている。韓国の3社が現地に構えることで、3社間の激突となるともいえるが、周辺動向を見つつ、スピーディな事業展開は韓国企業の機動力を見せつける。

全固体電池にかける新規参入組
 ドイツのメルケル首相の発言に影響されたかのように、本年前半に、イギリスのメイ首相も「イギリスにも電池産業を!」という口調で発言した。今や国を挙げての電池産業の育成~強化が大きなテーマとなってきている。
 イギリス政府筋の政策に呼応するかのように、本年、ダイソンはEVの製造から販売に乗り出す意向を表明した。家電系で一躍存在感を示した同社に、多くの人材を集める求心力はあるだろう。掃除機でもユニークな設計や優れた吸引力をもつことで商品魅力を訴求している。筆者も現在愛用しているが、デザイン性と言い吸引機能と言い、確かに期待を裏切っていない。
 そのようなダイソンだから、EV事業の実現可能性はあるだろう。ただ、日欧米韓の自動車ビッグ企業はブランド力を強みにEV戦略を打ち出している分、後発企業としての同社の新規事業にとって、ハードルの高さは否めない。
 同社は全固体電池を主軸にEVシフトを進めるような発言をしているが、12月14日の筆者のコラムで述べたように、全固体電池の実用化に向けてはまだ多くの課題があるのは事実だ。したがって、現在のLIBを一気に超えて全固体電池と言うビジネスモデルを標榜しているとするならば、リスクは大きいと言わざるを得ない。と言うのも、2025年に至るとも、現在のLIBがなくなるわけでもなく、性能と信頼性を向上させつつ、しかもコストが一層下がるLIBは自動車各社にとっても魅力あるコンポーネントであるはずだから。
 そういうダイソンに、日産自動車出身の若手エンジニア(彼も筆者の知人)が本年7月に移籍した。日本人はまだ同事業では一人とのこと、そして研究開発体制を構築している段階とのこと。それだけに、電池の事業化にはまだ時間が多く必要であるだろうから、一気に全固体電池に突き進むよりも、足元のLIB調達戦略を熟考し、EV事業を展開するシナリオがより現実的であろう。
 同じように最近、日本ではTDKが電池事業に1000億円を投じると発信した。ここでも全固体電池が前提の内容になっている。TDKの場合は、セラミックコンデンサー事業を展開していることで、全固体電池の中枢的役割を担う固体電解質とはコア技術が共通する。自社の強みを発揮できるという脈略は、新事業に着手するうえでは大きな武器になる。
 ただ、やはり同様に、全固体電池の技術開発に目途が付き、生産技術が整ったとは思えない現状、一気呵成の大投資で順調に進むようには思えない。現在は、全固体電池ブームのような勢いで各社が取り組み姿勢を強化し発信しているようだが、先のコラムで執筆したように、多くの課題を解決し、技術骨格を創り上げることが先決である。それが競争力をもち、価値あるものとして展望できてからの大投資というストーリーが、本来の姿ではないだろうか。

中国勢と米テスラに偏る車両火災事故の晴れぬ空
 三菱自動車が2009年に発売したEVの「i-MiEV」、10年に日産自動車が発売した「リーフ」では、これまで火災事故は1件も起きていない。米フォード・モーター、欧州勢ではルノー、BMW、ダイムラー、VWの電動車も市販されてきたが、市場での火災事故は発生しておらず、安全性・信頼性の構築が進んでいる。
 このような状況の中、中国ではBYDやローカルメーカーが市販したEVバスやEVタクシーで2010年から火災事故が急増し、現時点でも続いている。安全性・信頼性に関する評価試験項目の抜けや基準の甘さ、自動化が日韓勢ほど進んでいないためLIB自体バラツキがあるなど、複数の要素が介在しているようだ。
 一方、テスラの「モデルS」においては、2013年に5台の火災事故が立て続けに発生し、その後も16年にはフランスでの試乗会での火災事故、さらにはノルウェーやスウェーデン、そして中国で火災事故が頻発した。全体で何台の車両が火災事故を起こしたのかは定かではないが、二桁台数の車両で火災事故が起こったことは事実のようだ。テスラのEVには、パナソニックのLIBが搭載されている。しかし、テスラからもパナソニックからも、一連の火災事故に関する詳細な原因説明はなされていない。
 車載用電池に関するハザードレベルの基準をEUCARでは、7段階に分類している。レベル0は「何の変化もない」という定義、レベル1は「保護機構が作動」、レベル2はセルが回復不能となる「欠陥・破損」、レベル3は「電解液の漏出」、レベル4は「電解液の噴出」、レベル5は「発火ないし火災」、レベル6は「破裂」、レベル7は「爆発」との分類となっている。自動車業界のコンセンサスはレベル4までは容認となっている。ただし、日本の自動車業界はレベル2や3までなら許容する基準を設けているところが多く、その分、信頼性の高いLIB設計と開発が進められている。
 このハザードレベルに照らせば、テスラの「モデルS」はレベル5に該当するため、自動車業界の基準に比べると信頼性が低い結果を招いていることになる。火災事故以来さまざまな対策がなされているとは思うものの、火災を発生させたのはLIBにほかならないことから、原因解析と根本対策の説明が必要と思う。
 車載用電池ではないが数週間前に、富士通のノートPCの火災によるリコールが伝えられた。搭載されていたパナソニックのLIBに不具合があったという。それ以前にも、パナソニック自社のノートPCでもLIBのリコールが発生していた経緯もあり、ノートPCでのLIBのリコールはパナソニックに偏在しているように思える。
 2008年に日本の電気安全法に組み込んだモバイル用LIBの安全性評価試験での基準では、いかなる不具合が発生しても、LIBの火災や爆発が起きないような基準を設けて適用されている。したがって、本来的にはノートPCでの火災事故は起きてはならないはずだ。一連のリコールを耳にすると、モヤモヤ感が漂うのは筆者だけではないだろう。

2018年にEVシフトは具現化するか?
 ダイムラー、BMW、そしてダイソンには、日本人の若手エンジニアが中枢の一角を成す形で関わっている。同じ日本人として、同じく日本企業から海外企業へ移籍したという共通のバッググラウンドを有す同士として、まずは今後の活躍にエールを贈りたい。
 2017年は、「EVシフト」が流行語となるほどの勢いで各業界を駆け抜けた。18年からは、その具現化がいよいよスタートする。各社の計画を発信した戦略をベースに、発信力だけではなく各社の真の実行力が問われようとしている。

このコラムについて

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