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日経ビジネスオンライン

2019/01/11

連載履歴

日経ビジネスオンライン連載「技術経営 – 日本の強み・韓国の強み」 アクセスランキング
1.「就活時点で日本は負けている」(2013 4.19)———————————-12位
2.「新人研修は育てる場か競わせる場か」(2013 5.2)——————————12位
3.「新入社員がいきなり課長級のサムスン」(2013 5.16)—————————-3位
4.「『技術に上下関係なし』を信じて痛い目に」(2013 5.30)————————5位
5.「部下に絶対服従を強いるサムスン」(2013 6.13)——————————–7位
6.「ホンダの自前主義は人を育てる」(2013 7.4)———————————-10位
7.「人事異動を本人に任せるホンダ、昇進が最大目標のサムスン」(2013 7.18)——-11位
8.「企業戦略に振り回される技術者」(2013 8.8)———————————–5位
9.「サムスン移籍の理想と現実」(2013 8.22)————————————-1位
10.「部長級でも責任を取らされるサムスン」(2013 9.5)—————————–1位
11.「韓国人社員との付き合い方」(2013 9.19)————————————-7位
12.「シェア1位を奪われた原因はコストではなく慢心」(2013 10.3)——————–3位
13.「車載用電池、日本勢の強さの秘密」(2013 10.17)——————————-3位
14.「倍返しなるか、日本の電池産業」(2013 10.31)———————————4位
15.「グローバル化で遅れる日本、6つの課題」(2013 11.14)—————————1位
16.「M&Aの光と影、サムスンの事例から学ぶ」(2013 11.28)—————————6位
17.「特許マネジメントが下手な日本」(2013 12.12)———————————8位
18.「居場所を失った技術者の生き方」(2013 12.26)———————————8位
19.「サムスンのプロジェクト失敗に学ぶこと」(2014 1.16)————————6位
20.「日本とは違う、サムスン流『人付き合い』」(2014 1.30)———————-11位
21.「部下の育成より自分の昇進優先なサムスン」(2014 2.13)———————-13位
22.「白熱する電動車両開発、日本は勝てるか」(2014 3.13)———————-5位
23.「東芝事件に考える、技術流出は防げるのか」(2014 3.18)——————–6位
24.「深刻な中国大気汚染、電動車両は救世主になるのか」(2014 4.10)————-11位
25.「日本の技術力は本当に高いのか」(2014 5.22)—————————-9位
26.「学会で発表するホンダ、メモを取るサムスン」(2014 6.26)—————4位
27.「サムスンの人事と成果のあいまいな連動性」(2014 7.3)——————8位
28.「企業と流動する人材との関係」(2014 7.24) ———————— -
29.「サムスン電池事業の真剣度」(2014 8.7) ————————–12位
30.「環境自動車で日本がリードし続けるための条件」(2014 8.28) ———–7位
31.「サムスンの失速に見る日本の戦略」(2014 9.11) ———————-2位
32.「大手術のサムスン、対症療法のソニー」(2014 9.25) ——————8位
33.「中村修二氏との談話を通じて考えた日本の競争力」(2014 10.9) ———2位
34.「ノーベル賞を輩出する日本、輩出できない韓国」(2014 10.23) ———1位
35.「異業種交流イベントで感じた日本の強み」(2014 11.6) —————19位
36.「技術流出はどうやって防ぐのかを改めて考える」(2014 11.20) ——–15位
37.「エアバッグリコール問題に見る技術経営の重要性」(2014 12.11) ——–16位
38.「ナッツリターンに見る韓国財閥の影」(2014 12.25)       ——–10位
39.「エコカー世界戦争と生き残り戦略」(2015 1.8)       ——–8位
40.「トップ外交を好む韓国、実務側から進める日本」(2015 1.22)  ——– -
41.「日韓電池産業への追い風となる中国政策」(2015 2.12)  ————-13位
42.「泥沼化する韓国財閥紛争がもたらす背景」(2015 2.26)  ————-5位
43.「社長・役員の辞任におけるホンダとサムスン」(2015 3.12)  ———9位
44.「ノーベル賞の期待を背負うリチウムイオン電池」(2015 3.26)  ——-11位
45.「電動化と自動運転で変わる自動車の勢力図」(2015 4.9)  ———-9位
46.「韓国の対人関係と日本の立ち位置」(2015 4.23) —————–8位
47.「車載用電池を土俵とした日韓の熾烈な争い」(2015 5.21) ———-8位
48.「第3勢力参入で定置用電池業界の競争が激化」(2015 5.28) ———8位
49.「中小企業が技を持つ日本、企業格差が止まらない韓国」(2015 6.11) -12位
50.「中小企業に意地がある日本、大企業が支配する韓国」(2015 6.25) —13位
51.「出る杭は打たれる日本、出ないと潰される韓国」(2015 7.9) ———3位
52.「電池の国際会議に見る日本と韓国の立ち位置」(2015 7.23) ———-6位
53.「東芝事件に見る経営側の圧力、ホンダとサムスンの事例」(2015 8.6) –6位
54.「壇蜜との会話で考えた仕事術と企業戦略」(2015 8.27) ————-11位
55.「日韓電池業界に立ちはだかる中国の価格攻勢」(2015 9.10)———–13位
56.「韓国に先んじた日独連携の車載用電池認証サービス」(2015 9.24)—–12位
57.「VWが不正に至った3つの問題」(2015 10.8)————————-5位
58.「VWが受ける逆風、日本が受ける追い風」(2015 10.22)—————-4位
59.「VW、東芝の不正は企業の焦りがもたらした」(2015 11.12)————11位
60.「タカタのリコールに思う発見時の対応の重大さ」(2015 11.26)———15位
61.「2強の韓国電機業界に対抗できるか日本勢」(2015 12.10)————-11位
62.「2016年、自動車の産業競争力を展望する」(2015 12.24)————–18位
63.「動き出した中国での自動車、電池各社の投資攻防」(2016 1.7)———-9位
64.「日韓電池競合の激化に割って入る中国勢」(2016 1.21)—————20位
65.「VWスキャンダル後の欧州電動化戦略の行方」(2016 2.12)————-16位
66.「サムスン、LGの2強と対峙する日本の立ち位置」(2016 2.25)———–9位
67.「シャープ身売りで混迷するパネル業界」(2016 3.10)—————–11位
68.「シャープ問題で考える日本の産業競争力の保ち方」(2016 3.24)———8位
69.「戦略は不変ではなく随時見直してこそ生きる」(2016 4.14)————11位
70.「戦略の欠如で陥落した日本の民生用リチウム電池」(2016 4.28)———9位
71.「虚偽の科学や技術はコンプライアンス欠如が原因」(2016 5.12)———8位
72.「燃費不正事件を未然に防止する今後の抑止力」(2016 5.26)————16位
73.「サムスン移籍で実感した人材流動の重要な意味」(2016 6.9)————3位
74.「外資系で働けない人の5つの特徴」(2016 6.23)———————–5位
75.「協業の成功と失敗を分ける要素は何か?」(2016 7.14)—————-12位
76.「サムスンのBYD出資は中国市場成功への布石?」(2016 7.28)———-18位
77.「ソニー、日産の電池事業撤退の裏にあるもの」(2016 8.10)———-6位
78.「電動化、自動運転、安全機能で変わる業界勢力図」(2016 8.10)——–10位
79.「遅すぎたディスプレー産業のオールジャパン」(2016 9.8)——–17位
80.「なぜサムスンの最新スマホは爆発したのか?」(2016 9.21)——2日連続1位                                       81.「最新スマホが販売中止のサムスンに必要なこと」(2016 10.13)——–10位
82.「爆発などで大荒れの電池業界、勝敗の行方は?」(2016 10.27)———7位
83.「トヨタがEVを投入せざるを得ない事情」(2016 11.10)————–12位位
84.「選ばれるEVはどれか? テスラは生き残れるか?」」(2016 11.24)—–6位                                        85.「エコカー戦略における燃料電池車の位置づけは?」(2016 12.8)—– 12位
86.「政界、産業界が共に混乱する韓国」(2016 12.22)——————-6位
87.「2017年、エコカー開発は正念場を迎える」(2017 1.12)————-17位                                          88.「中国のエコカー政策に翻弄される日韓企業の悩み」(2017 1.26)——5位
89.「サムスンのスマホ事故を契機に揺れる電池業界」(2017 2.9)——7位
90.「国際会議で感じた欧州自動車勢の電動化への気迫」(2017 2.23)——15位
91.「サムスンに吹く大逆風はグループ再編の好機?」(2017 3.9)——16位                                                   92.「東芝、シャープなどから見る技術経営の重要性」(2017 3.23)——-6位                                        93.「中国エコカー市場で窮地に立たされる韓国企業」(2017 4.13)——3位
94.「中国政策に振り回される各社のエコカー戦略」(2017 5.11)——11位
95.「リチウムイオン電池も有機ELの二の舞か?」(2017 5.25)——–3位
96.「自動運転による自動車業界のパラダイムシフト」(2017 6.8)—– -
97.「韓国大手企業に見る日本市場の魅力と障壁」(2017 6.22)——–7位
98.「見通しが立たない東芝と絶好調サムスンの違い」(2017 7.13)—–7位
99.「電動化で先導してきた日本が自動運転で遅れ?」(2017 7.27)—–8位
100.「提携進む自動車業界、明暗見えてきた電池業界」(2017 8.10)—–6位
101.「ハイエンド偏重の日本、ローエンドも重視の韓国」(2017 8.24)—9位
102.「急加速のEVシフトに潜む5つの課題」(2017 9.14)————–1位
103.「ノーベル賞の期待がかかるリチウムイオン電池」(2017 9.28)—-3位
104.「相次ぐ法令遵守違反、未然に防ぐ3つの要件」(2017 10.12)—- 14位
105.「先行企業に神戸製鋼不正問題の防止策を学ぶ」(2017 10.26)—- 7位
106.「環境改善か下剋上か、EVシフトの先の業界勢力」(2017 11.9)—-6位
107.「政治外交まで絡めた電池業界の混乱と思惑」(2017 11.24)——12位
108.「トヨタとパナの提携で加速する次世代電池開発」(2017 12.14)—4位
109.「EVシフト下の自動車と電池業界、新規組の思惑」(2017 12.28)–10位
110.「中韓首脳会談でもかなわぬ韓国電池業界の思い」(2018 1.11)— 3位
111.「日韓で仕事観の違いはどこから生まれるのか」(2018 1.25)— 7位
112.「窮地のテスラに立ちはだかる自動車トップ」(2018 2.8)—— 4位
113.「自動車の電動化における元素戦略と資源争奪戦」(2018 2.22)—- 7位
114.「合弁が難しい電池事業、韓国勢はフリーを選ぶ」(2018 3.8)—- 12位
115.「新社会人がキャリアを形成するために必要なこと」(2018 3.22)— -
116.「テスラが抱える三重苦、経営危機に陥る?」(2018 4.12)——–6位
117.「テスラのEV事業、三重苦どころか五重苦に?」(2018 4.26)——3位
118.「テスラのEV苦戦で考える新規参入のリスク」(2018 5.10)——–4位
119.「R&D投資で韓国勢に見劣りする日本勢」(2018 5.24)———–11位
120.「車載電池のグローバル市場揺さぶるCATL旋風」(2018 6.14)——3位
121.「日産が開発凍結を宣言した燃料電池車の行方」(2018 6.28)——7位
122.「燃料電池車を生んだホンダ基礎研究所の実力」(2018 7.12)——4位
123.「中国の新エネルギー車規制にどう対応すべきか?」(2018 7.26)—8位
124.「電動車の米ダブルスタンダード法規の行方と波紋」(2018 8.9)—10位
125.「繰り返される不正、企業統治はどこまで可能か?」(2018 8.23)– -
126.「爆走中国EV、電池業界に起きている異変」(2018 9.13)———-1位
127.「中国製リチウム電池が信頼できない理由」(2018 9.27)———-2位
128.「トップブランド参入で超激戦を迎えるEV市場」(2018 10.11)—–10位
129.「グローバル会議を通じて考える日韓の強み」(2018 10.25)——-12位
130.「EVにおける中国の政策変化は外資への追い風?」(2018 11.8)—–7位
131.「EVが減速する中国、加速する欧州」(2018 11.22)—————5位
132.「インド市場における自動車の電動化と矛盾」(2018 12.13)——–5位
133.「2019年、車載電池業界の勢力図が明確になる」(2018 12.27)—–10位
134.「ホンダとサムスンで経験した技術経営の真髄」(2019 1.10)——-5位

2019/01/10

第134回コラム 最終回

ホンダとサムスンで経験した技術経営の真髄

技術経営――日本の強み・韓国の強み

反面教師と逆境はエネルギーに変換

2019年1月10日(木)

佐藤 登

 2013年4月から本コラムを執筆し、今回が134回となった。日経ビジネスオンラインがクローズすることで今回が最終回となる。これまでのコラムを総括すべく、「技術経営の真髄」とは何かを述べてみたい。

ホンダが教えてくれた信念像
 1978年4月から26年4カ月、本田技研工業と本田技術研究所で勤務した。最初の10年間は鈴鹿製作所の生産技術の現場で、自動車の腐食制御技術開発に関わった。「ホンダが潰れる」とまで言われたほどの大錆問題解決のためのプロジェクトを任され対応した。そこで学んだことは、定説や常識に囚われないこと、そして自らの実験データからメカニズムを考察し、その原因を突き止めることで解決策を導くというプロセスの重要性であった。
 ともすれば材料メーカーの見解に耳を傾け、あたかも自分の論理のようにのたまう諸先輩の姿には納得できず、自らのデータで議論する必要性があると思えた。なぜなら、材料メーカーは自社の製品に関して不利な見解を述べないからだ。自身のデータから自説を立て実証することで、車体材料の大幅な転換を図った。それにより、ホンダ車が錆問題から解放されたのは1986年頃のこと。しかしその間には、事業部間の確執や上下関係の押し付けなど、下図に示すように数々の紆余曲折を経験した。欧米諸国のサービス部門や販売部門が市場での製品品質に対して合格の判断を出してくれた時の達成感はひとしおであった。
 この社内研究成果によって、会社の支援もあり、ホンダでは歴代4人目となる博士号を取得できた。大錆問題の解決に貢献したご褒美とも言うべき転換点が訪れた。1990年2月には次世代技術研究の舞台となっていた本田技術研究所・和光研究センターに異動させてもらった。当時のホンダの常務取締役であった吉野浩行氏(後に社長就任)が、「大きな成果をあげたのだから、ホンダのどこの部門に移っても良いから提案しなさい」との激励をいただいたことでの結果であった。
 ここで得た教訓は、自ら考え行動に移すということで、他人の意見に耳を傾けても自らその意見が正しいのかどうかを検証しなければならないということ、それを通じて事の本質が見えるということであった。
 1986年に設立された当時の和光研究センターは、既存事業ではない新事業に繋げる基礎研究開発部門であった。上図に示すように、そこからホンダジェットが30年の歳月をかけて事業化としての離陸に成功した。和光研究センターの最大のイノベーションと筆者は評価する。「やがては空を飛びたい」と発していた創業者・本田宗一郎の思いを実現するために、経営陣も技術陣も長年に亘る並々ならぬ努力によって実を結んだのである。
 ホンダジェットの特徴は、主翼上面にエンジン配置、空力的に大きな効果を得られる最適な位置と形状。そして、革新的エンジン配置、胴体のエンジン支持構造不要、広い客室と大容量の荷物室を実現した。米国で最初に発表した際には、米国航空業界からは常識外れの設計と揶揄された。しかし、その後の飛行データやメカニズムを明らかにすることで、批判していた航空業界も新たな発想を認めただけでなく、賞を授与するまでの評価を下した。ここでも、定説や常識に囚われない発想が具現化された。
 1月8日から日本経済新聞に、「Mr.ホンダジェットの執念」が連載されている。9日の記事を見て思わず笑ってしまった。エンジンを主翼の上に付けると言う提案をした開発責任者の藤野道格氏に対して、それを聞いたホンダの上司が「こんなバカなエンジニアは見たことがないな!」と罵倒したと言う。誰が発した言葉かは、数人の候補が浮かぶがイニシャル表記されていないので確信はない。いずれにしても、この上司は技術経営側にいたはずだから、ここでも先入観や定説に囚われて間違った判断をしたと言うことだ。技術経営の視点では、「常識から外れるような提案だが、ならば実証してみろ!」と言うような発言が適切だった。技術経営側に就く者は主観や先入観で判断すべきことではないことを大いに反省すべきであろう。
 この基礎研究所での筆者の新たな業務は、これまたタイミングが合ったように、異動してテーマ探索をしていた7カ月後のことだった。1990年9月に、米国カリフォルニア(CA)州大気資源局(CARB)が発したゼロエミッション自動車(ZEV)法規である。日米大手6社に課されたのは、98年から電気自動車(EV)をCA州に2%供給するという基本方針であった。
 日米自動車業界を震撼させたZEV法規の発効により、筆者がホンダでの電池研究機能を創設する役目を指示された。「錆と電池」と言う名言を発した当時の役員研究員である佐野彰一氏の影響は大きかった。
 1995年には、栃木研究所へ組織ごと移ることになって開発が加速された。98年の最初のEV(ホンダEV-Plus)に適合させる大型ニッケル水素電池の開発から実用化、その後はハイブリッド車(HV)用のニッケル水素電池開発、そしてリチウムイオン電池(LIB)の研究へと進化させる研究戦略を自ら描き、その進行を図っていたのだが事件が起きた。
 2002年を超えると、筆者が進める化学電池領域の研究開発は分が悪くなる。研究所の経営陣が化学電池の価値を低く評価したからである。そのひとりのK氏は筆者に向かって、「車載用のLIBは実現しない!」「化学電池よりも大容量キャパシタだから、佐藤さんも化学電池を捨てて、そちらへ移ったら?」とまで言われて愕然とした。筆者は、「物理電池と言えるキャパシタの原理を考えると、キャパシタこそ電動車(xEV)用の主電源としては実現されない」と反論した。
 答えが無いようなキャパシタプロジェクトへの合流は拒否しつつも、研究資金も人員もキャパシタ側に持っていかれた身分としては、悶々とする日々を過ごすことに。しかし、信念だけは曲げなかった。「いずれ車載用LIBは実用化に至る。キャパシタこそ実現には至らない」と。
 果たして、それから20年近くが経過した。今や、全世界でLIBの開発から実用化が活発に進められている。LIBの実現がなければ、昨今のxEVの実用化には至っていない。技術経営としての判断は、必ずや論理に基づいた判断をしなければ大きな過ちを犯すという典型的な事例である。
 2004年初頭に、韓国サムスンSDIからスカウトの話が来た。国際会議での発信や論文発表、講演などをしていた関係でサムスンがアプローチして来たのである。サムスンの考え方はホンダとは真逆で、車載用LIBの実現に向けて大きく舵を切った時点である。即断はせず、3カ月ほどかけて利害得失を入念に勘案した結果、04年4月にホンダを去る決断をして7月に退社。9月にサムスンSDIに常務として移籍、渡韓し、サムスンの城下町へ赴任した。
 2002年に燃料電池車(FCV)用途に一旦事業化の道筋を付けたかのようなホンダのキャパシタ事業であったが、その後、絶対容量の不足からFCVの商品性を低下させることが露呈し、06年にキャパシタ事業は失敗と言う判断にて断念することに追い込まれたのである(上図)。「技術は嘘をつかない」「論理が伴わない技術は成功しない」と言う教訓だ。

サムスンへの移籍と技術経営  
 今でこそ、日韓の政治外交はギクシャクした関係が続いている。慰安婦問題、徴用工問題、海上自衛隊哨戒機への射撃用レーダー照射問題と、近年にないほどの悪化した関係下にあるのは事実だ。筆者がサムスンに移籍した2004年といえば、直前の韓国ドラマ「冬のソナタ」の大ヒットにより、韓流ブームが押し寄せた絶頂期であった。この効果も手伝って、政治外交も温和なムードと化していたので、現在とは好対照的だった。
 サムスンに移籍してからは、当然、文化や考え方も異なり、戸惑う部分も少なからずあったものの、儒教の縛りがない筆者にとっては自分流の仕事術がある程度可能であった。振り返れば、ホンダからサムスンの移籍が筆者の仕事術、とりわけ技術経営のあるべき姿を追求する意思が強くなったようだ。
 サムスンでは経営側に携わったことで、最初の5年間は中央研究所で研究戦略と研究テーマの運営と判断を業務の中心としていた。ここでは、ホンダで経験した反面教師の存在を参考にしつつ、自身は決してそうならないように務めたのである。
 モバイル用LIBの新技術開発、車載用LIBのプロモーションのための全世界の自動車各社との協議、アウトプットが期待されない、あるいは出口が見えないプロジェクトの中止判断、新ビジネスモデルを構築するためのプロジェクトの起案等に着手。韓国人役員との激しい論議も厭わず実行してきたことが、それなりの成果に繋げたと言えよう。
 6年目となった2009年9月には、本社経営戦略部門に異動となると共に、東京へ逆駐在となり日系顧客とのビジネスアライアンスに心血を注いだ。技術経営と経営戦略は不可分の関係だ。両輪として機能させることが価値を最大にする。

ホンダとサムスンの経験を活かして
 2012年12月31日付けでサムスンを退社したので、6年前になる。相前後し、御縁をいただいてエスペックの上席顧問、名古屋大学未来社会創造機構の客員教授の任にあたっている。名古屋大学の当センターが発足することが決定された時期に、プロパーの教授としてお誘いを受けたのだが、サムスンで仕掛けていた大きな業務を中断させることは無責任になると考え、客員教授としてお手伝いすることを逆提案した。
 もっとも、6年前の2013年1月には、電池業界再編のためのプロジェクト(産業革新機構がオーガナイズするLibertyプロジェクト)への検討委員として委嘱を受け、新会社設立に向けたシナリオ創りに参加した。電池業界の勝ち組であるサムスンでの経験を評価されての委嘱であった。13年中盤になって新会社の全骨格を創り上げたものの、13年末にソニーがそのプロジェクトから離脱したことで、当プロジェクトは空中分解に終わった。
 エスペックは環境試験機器業界の大手で、国内シェアは60%、グローバルでは30%のシェアを誇る。企業規模ではホンダやサムスンに比べると小ぶりだが、ビジネスモデルとしては自動車業界、半導体業界、電池業界、電機業界を中心に大いに貢献していると言えよう。
 昨今の自動車のパラダイムシフトは、正に電動化と自動運転が両輪で最大の開発テーマとして展開されている。自動車業界としては、真に生き残りをかけると言っても良いほどの大きな命題となっている。
 自動車の電動化開発をサポートする機能としては、恒温恒湿槽や充放電テスター機器の開発は元より、車載用電池に対して、自動車業界や電池業界等から試験評価を受託するビジネスモデルを2013年に構築。更には、16年から義務付けられた国連規則ECE R-100 Part.IIによる電池安全性評価試験(電池圧壊試験など9項目)の認証取得ビジネスを構築し、「バッテリー安全認証センター」として運営にあたっている。
 また、国や地域によって求められる製品仕様や機能は異なるので、そのニーズにマッチする製品戦略が重要だ。エスペックが得意としてきたハイスペック仕様は、日米欧市場での評価は高いが、製品の低価格を要望する中国や韓国市場では異なるビジネスモデルが必要とされてきた。その結果、充放電テスターの低コスト仕様の開発も2018年には実現され、中国市場を中心に攻略しつつある。
 こうした一連の事業化は、新ビジネスモデルとしてタイミングよく早期に実現できたものであるが、それ以上に、各業界の開発効率を最大限引き出すことに貢献していることでの意義が極めて大きい。
 一方、自動運転はまったなしのビジネスとして、自動車業界やソフト企業がビジネスチャンスとして、そして同時に生き残り策として血眼になって開発に取り組んでいる。欧米勢の自動車各社の進展状況と比較すると、日系勢のスピード感は今一歩の感が否めない。この分野でも各業界に貢献すべく、当社の開発機能を向上させるための方向付けを行っている。
 自動運転のレベル4と5ではドライバーが介在しない領域となるが、その分、信頼性の構築は従来までにない以上の難度となる。現状、既存の自動車に搭載されているセンサーでも、降雪地帯ではセンサーが機能しないという自動車のクレームも起きていると言う。ましてや、自動運転においてはセンサー機能の不具合は致命的になる。
 完全自動運転では想定外と言う表現は通用しない。そのためには、あらゆる諸条件に対しても適合できるシステムの機能が求められる。当社ではそういう外部状況を想定した環境評価システムの構築を加速させている。雪、吹雪、霧などは当然ながら、雪質によっても自動車に及ぼす影響に差が生じる。こうした木目細かな環境モードも勘案して、技術課題を早期に抽出し、解決できる機能を提供することが当社の使命であり、各業界への貢献と考えている。
 当社の経営戦略と技術経営は、スムーズな両輪の駆動力として、ほぼほぼ機能しているように映る。その要因は、経営側と実務側の密なコミュニケーションにより、考え方のギャップを極力小さくしていること、経営側からの一方的な押し付けではない戦略立案、顧客のニーズを把握して顧客満足を得るためのビジネスモデル創りなどが功を奏している。

技術経営としての真髄 
(1)経営側と実務側との信頼関係が基本となる。そのためには、都合の悪いことも表舞台に出して、その解決を双方の立場で考え方向付けることが必要だ。不都合な真実をさらけ出さないことで、後に事業が悪化し事業撤退に追い込まれたサムスンの事例を結構見てきた。日系企業でも、データ改ざんや法令遵守に違反するスキャンダラスな事件も昨今の大きなニュースとして採り上げられている。いずれにしても不都合であればあるほど、表舞台での解決策や戦術を議論できる環境創りが経営側に求められている。

(2)経営戦略が明確で、それに基づく技術戦略の筋道が通っていることが必要である。さらにそこにリンクする戦術に論理的飛躍がないこと、主観的判断のみではなく客観性が担保されていること、実現された時の価値の評価がなされていることが前提となる。

(3)実務レベルの遣り甲斐や達成感を引き出すためのマインドやモチベーションを高める施策が効果的である。成果に応じた報酬の配分、会社の業績に貢献した分に対する対価の補償にも合理性が必要だ。負の連鎖は企業にとって大きな損失につながる。正の連鎖によって、更なる上昇気流を創ることが企業の発展に大きなエネルギーとなるはずだ。結局は人材に帰する。人材を大切にする企業経営が、持続可能で発展する企業を形作っていくものと考える。

謝辞

 2013年から約6年にわたって、本コラムの場を提供いただいた日経BP社に感謝申し上げます。そして、御愛読いただいた皆様方には賛否両論の御意見もいただき、本当にありがとうございました。

2018/12/27

第133回

2019年、車載電池業界の勢力図が明確になる
技術経営――日本の強み・韓国の強み
積極投資に出る韓中勢、劣勢感をぬぐうべき日本勢
2018年12月27日(木)
佐藤 登

 2015年、韓国のサムスンSDIとLG化学は車載用リチウムイオン電池(LIB)の生産工場を、それぞれ西安市と南京市に構えた。日本勢が中国進出をする前にスピード感を発揮して中国のローカル自動車メーカーに供給するビジネスモデルを描いていた。
 2016年2月には、パナソニックが大連遼無二電気として車載電池製造の合弁会社を設立した。その延長上で、17年4月にはパナソニック オートモーティブエナジー大連として、LIB生産拠点の新工場を開所した。このビジネスモデルは、トヨタ自動車とホンダが現地生産する電動車(xEV)に供給すると共に、中国ローカル電気自動車(EV)メーカーへの供給も視野に入れた戦略だった。

中国政府の外資排除
 このようなビジネスモデルが中国国内で進行すると、その影響を大きく受けるのは中国ローカルのLIBメーカーである。現在、車載用LIBのローカルメーカーは200社にものぼると言われている。
 日韓のLIBとは性能面や安全性の面で劣勢にある中国の大半のローカルメーカーにとっては、非常に不利なビジネスとなることが容易に推測される。その背景から、2017年に中国政府が打ち出した「バッテリー模範基準認証」、いわゆるホワイトリストで外資の排除に向かった。すなわち、中国の電池産業を国策として保護するために、様々な理由をかざして日韓電池各社の締め出しを図ったのである。
 そのホワイトリストには中国系のみ57社が登録され、それらのLIBを搭載するEVには補助金を出す一方、ホワイトリストに組み込まれていない日韓電池各社のLIBは補助金の対象から外された。その結果、日韓の、とりわけ韓国の2社には厳しい仕打ちとなった。
 パナソニック大連のビジネスは、中国ローカルEVメーカーへの供給ができなくてもトヨタとホンダのxEVに供給できれば自立可能なビジネスとなる。2018年には、北米で生産開始となったホンダのハイブリッド車(HV)にも供給が始まった。
 その点、韓国勢は中国ローカル自動車各社との連携でビジネスモデルを進める必要があるのだが、残念ながら中国のあからさまな外資排除により、サムスンSDIは稼働率が急速に低下し、社員の解雇にも追い込まれた。その後は、オーストラリアで活発な太陽光発電事業の電力の受け皿となる蓄電ビジネスを獲得し、西安工場で生産されるLIBをこの事業に結び付けていった。
 同時に、経営判断にスピード感があるサムスンSDIとLG化学は矛先を欧州に向けた。LG化学はポーランドに約400億円を投じてLIB工場を建設し、いち早く稼働を開始した。サムスンSDIも同等規模でハンガリーにLIB工場を建設し、2018年から稼働を始めた。
 この両社の動きを静観していた韓国SKイノベーションも、ハンガリーに850億円規模の大投資を決断し、2020年の稼働を目指している。すなわち、韓国3社が欧州自動車業界にビジネスを拡大する戦略に出て行った。
 もっとも、2019年からは中国エコカー政策として新エネルギー車(NEV)規制が発効する。そして、20年からは中国のエコカーへの補助金が終了する。となれば、ホワイトリストは意味がなくなりLIB業界にとっては中国ローカルメーカーが優遇されないフラットな市場になる。そのまま進めば、日韓勢にとっては極めて大きな追い風となる。

中国市場で巻き返しを狙う韓国勢
 LG化学は南京江寧濱江開発区に、LIB生産拠点として新たな南京第2工場の建設に着手している。19万8000平方メートルの敷地に、2023年まで約2100億円規模の大投資により、EV換算で年産50万台規模を計画している。19年10月から段階的に稼働開始するという。この起工式に南京市の張敬党書記と共に出席したLG化学のパクチンス副会長は、「南京第2工場は最新技術と設備を投資し、急成長するEV電池市場に対応できるように世界最高水準の工場を建設する」と力説した。
 一方、12月10日の東亜日報によれば、サムスンSDIは西安市に車載用LIBの第2工場建設を検討しているとのこと。今後、中国市場でのEV需要が大幅に伸びると展望し、まさしく2020年からの補助金政策が廃止されることに合わせて、生産能力を確保することを念頭に置いたビジネスモデルである。
 投資規模は105億元(約1700億円)、16万平方メートルの敷地にEV用の60Ah級LIBを生産する5ラインの模様である。同社は現在、韓国蔚山(ウルサン)と西安、そしてハンガリーの3カ所でxEV用LIB生産工場を構えている。生産能力はEV基準で、蔚山が6万台、ハンガリーが5万台、既存の西安が3万台となっている。
 第3勢力のSKイノベーションも、中国補助金政策打ち切りのタイミングを勘案して、既に江蘇省常州市にEV用LIB生産工場を着工中だ。生産能力は7.5GWhで、50kWhのLIBを搭載するEV換算では15万台に相当する。既存の韓国忠清南道瑞山(ソサン)市のLIB工場を約5GWhまで拡大する計画と共に、18年3月に着工したハンガリー新工場は7.5GWhであることから、2022年には年産約20GWh規模に達する見込みである。
 同社は2017年から、独ダイムラーのメルセデスベンツのEVにLIBを供給しており、その流れを受けて三菱ふそうトラックのEVにも同社のLIBが適用されている。

欧州自動車各社の巨額LIB調達
 そのダイムラーは、2025年までに全販売台数の15~25%をEVにする計画だ。現在、SKイノベーションの他にLG化学からもLIBを調達している。同社はLIBセルを電池大手から調達し、自社でモジュール以降から電池パックまでの生産モデルを展開している。
 同社は、2030年までにxEV向けに約2兆5700億円分のLIBを調達すると発表した。LIBの長期調達計画を明らかにすることで、電池メーカーに対する求心力を拡大し、投資促進を図っている。
 LIBの巨額調達をめぐっては独フォルクスワーゲン(VW)が2017年の段階で、25年までに6兆5000億円を調達すると発表していた。EV市場が拡大すれば電池の生産能力が不足するという見方もあり、欧州自動車各社は生産キャパの安定調達を戦略的に推進している。

米テスラの投資とリスクの共存
 テスラは2018年7月、中国上海市に年産50万台規模のEV工場建設を決定していた。同年10月には、上海臨港装備産業パークに86万平米の用地を確保した。
 中国の21世紀経済報道によれば、2018年12月18日付で、同社は上海市にEV工場を間もなく着工するという。投資総額は8200億円規模になる見込み。第1段階では約2600億円の投資規模で完成車組立ラインを建設するとのこと。19年下半期の量産化を目指す模様だ。上海工場で生産するのは普及型EVの「モデル3」とSUV型の「モデルY」で、年産20万台から始め、最終的に50万台を目標にしている。
 同社はLIBセル工場の建設も計画しているが、協業先が従来のパナソニックになるかどうかは明らかではない。米国ネバダ州でのギガファクトリー稼働に至るまで、そして現在も苦戦を強いられているパナソニックにとっては、上海の事業は必ずしもビッグチャンスとは言えないはずだ。
 そもそも、中国で拡大方向にあるEV市場が2020年の補助金廃止の展開でどこまで拡大するのか、消費者は一層高価なEVに目を向けるのか、向けたとしても日米欧のトップブランドが中国市場に供給するEVと同社が真っ向勝負で勝算はあるのか――など、不透明感が漂うリスクも見え隠れする。

中国市場で予想されるリスク
 さて、中国市場で存在感を打ち出しつつあるトヨタ、ホンダ、日産自動車のxEVビジネス、そして猛追するジャーマン3(ダイムラー、BMW、VW)、米国勢のゼネラルモーターズとフォード・モーターも後れをとらないようxEV展開に向かっている。そしてテスラの中国での生産開始から販売と、EVプレーヤーが出そろう2019年となる。
 逆に、2020年からEV補助金の支援を受けられない中国ローカルEVメーカー。ローカル各社がトップブランドの日米欧自動車各社が供給するEVと真っ向勝負できるシナリオは全く見当たらない。このまま進めば、中国政府が標榜するローカルメーカーによる「自動車強国」の実現可能性は極めて低くなる。
 他方、電池業界もしかりである。韓国トップ3とパナソニックが今後も投資を拡大する中国市場では、ローカルの電池メーカーはどこまで闘えるだろうか。投資拡大と性能進化で先を走るCATLと、LIBとEV事業を垂直統合で展開するBYDはある程度は闘えるだろうが、200社の大半のローカルメーカーの淘汰が進むことは容易に予想される。
 日産が2016年8月に電池事業を切り離したことから、NECとの合弁でLIB事業を展開してきたオートモーティブエナジーサプライ(AESC)は現在、中国のエンビジョングループへの売却が決定されている。19年4月から中国系の新会社として再スタートする予定だ。
 この計画が順調に進むという保証はあるのだろうか。もともと同社は、2017年8月に中国のファンド会社GSRに売却することを決定した。しかし、GSRの資金調達が進まなかったことで買収延期が繰り返され、結局、18年6月末に買収がキャンセルとなる想定外の事件が起きた。エンビジョングループならば大丈夫なのだろうか? 実際に19年4月に買収が実現した姿を見ないと不確実性は否めない。
 AESCの中国ファンド系への売却にあたっては、経済産業省の中でも深刻な問題として採り上げられた。しかし、それを阻止する解決策は見出されないまま、間もなく中国系企業に手渡される。
 2019年にAESCが中国系企業に変身すれば、そこに連結されているNECエナジーデバイスも同時に中国系企業の傘下に入り、日本の電池業界からは2社がなくなることになる。そしてまた、AESCが中国にLIB工場を稼働させれば、これまた中国のローカルメーカーにとっては大きなライバルとして立ちはだかり脅威となる。
 CATLは当初から角型金属缶タイプの車載用LIBを開発し、ビジネスをしている。しかし、ほとんどのローカルメーカーのLIBはアルミパック包装材を使用するラミネート型に特化している。しかし、ラミネートタイプでグローバルビジネスを展開できている電池メーカーはLG化学とAESCの2社のみである。すなわち、200社近い中国の電池各社は、日韓のこの2社との競合を必然的に迫られる。そのような状況になれば、日韓2社との差が明確になり、ローカル各社には大きな逆風が吹くことになるだけでなく、淘汰が急速に進むことになるだろう。
 そうなれば、EVメーカーでのシナリオが崩れると同様に、中国政府が目指してきた「電池立国」にもひびが入る。もっとも中国政府にとっては、弱小のLIBメーカーは不要という割り切り感もあるかも知れない。
 このシナリオでは、中国の電池産業界は大打撃を受けることになるのだが、中国政府がそこまでは容認できないということになれば、新たな策を打ち出す可能性も否定できない。2020年からの補助金政策を新たに設け、新ホワイトリスト制度をかざして、再度、外資系電池企業を排除するシナリオのリスクはないだろうか?あるいは税金政策で、ローカルと外資に差を付けることも実行しようとすれば可能な中国である。
 仮に、中国政府が新たな政策を打ち出せば外資、特に大投資を進めている韓国勢の電池各社にとっては大打撃になる。このリスクヘッジをとっておかないと、何でもありの想定外の制度を押し付けることができる中国政策とは渡り合えないことになるだろう。

日系電池各社のありたい姿
 車載用電池では韓国がトップ3で事業集約が進行している。中国ではグローバルビジネスを展開するCATL、BYD、そして新たに加わるAESCがトップグループとしてビジネス攻防を強化する。
 その点、日本はどういう構図か? 電池各社が多いことでバラツキも多い。パナソニックは、サプライチェーンを構築しているトヨタ自動車、ホンダ、日産自動車、そしてテスラ事業で拡大を目指すことで自立化を進める。トヨタはプライムアースEVエナジー(PEVE)を子会社として運用していることから、PEVEの発展性はほぼほぼ保証されている。
 ジーエスグループはホンダとの合弁事業(ブルーエナジー:BEC)と三菱自動車の合弁事業(リチウムエナジージャパン:LEJ)ビジネスを強化できれば自立化と持続可能性はある。
 東芝は、スズキの簡易HVシステムであるエネチャージとのビジネスを拡大中だ。同社はインドでの事業を展開するために、スズキとデンソーとの3社で電池工場を建設中。ただ、フルHVやプラグインハイブリッド車(PHV)向けには、同工場で手掛けるSCiB電池では低電位(2.5V)の特性上、ビジネス構築は困難を極める。他方、蓄電池ビジネスでは電力会社等の産業用途で存在感を有している。
 日立化成の電池事業(旧新神戸電機⇒日立ビークルエナジー)は、GMへのLIB供給でビジネスを構築しているが、GMの投資計画とリンクする成長戦略が描けていない。日立グループとしては、LIB事業に対して強いマインドを有していない模様で、事業売却も視野に入れているようだ。とすれば、東芝と日立の電池事業を統合して、LIBの特性とラインナップを確保して協業することは意味がありそうだ。
 2013年1月から、筆者は電池業界再編の検討委員として関わった。ソニー、日産、NEC、AESCの統合を目指したこのプロジェクトは、ソニーのLIB事業売却撤回のあおりを受けて水泡に帰した。結果として、AESCもNECエナジーデバイスも中国企業の傘下に入る。
 日系勢としては、グローバルにかつ自立可能な路線を描き、投資力のある筋肉質電池企業となることが生き残りの条件となる。そのために日系勢としては、パナソニックグループ(PEVE含む)、ジーエスユアサグループ、東芝と日立を中心にした新会社グループの3勢力に束ねるのが得策ではないだろうか。

2018/12/13

第132回コラム

インド市場における自動車の電動化と矛盾
技術経営――日本の強み・韓国の強み
期待を寄せるのは日本、毛嫌いしているのは中国
2018年12月13日(木)
佐藤 登

 11月23日から26日まで、初めてインドを訪問した。筆者が所属するキャパシタフォーラム(会長:東京大学・堀洋一教授)が企画したインドでのシンポジウムと視察に参加するためである。
 これまで、インドは仕事でも旅行でも敬遠してきた国であった。しかし、今回はインド政府筋との意見交換やホンダ・インド研究所への訪問協議が組み込まれていたので、絶好の機会と思って参加した。今回の骨子は、インド政府が唱えている自動車の電動化計画に関するもので、インドを直接体験し意見交換をすることでいろいろなことが見えてくるはずと考えたからである。
 首都デリーの日本人は2600人、新興都市グルガオンには日系企業が多く2400人が住んでいる。早晩、グルガオンの日本人はデリーを超える。インド全体の日系企業は2017年時点で1350社と、直近で急増している。それだけ、今後の産業経済の発展が期待されている証拠である。
 インドは世界7位の面積。人口は13億6000万人で日本の11倍。中国の人口は13億9000万人であるが、3~4年以内にインドが中国を超えるといわれている。しかし一方では、デリーの交通渋滞、大気環境は中国より酷いとされており、大きな社会問題と化している。排ガス問題、PM2.5(300~500μg/m3、日本基準は70μg/m3以下)は切実な課題である。教室でも本が読めなくなることもあり、その場合には学校が休みになるほど。インド政府は技術が唯一の解決策と表現している。PM2.5のほかに、農場収穫後の焼き畑や、ホームレスが暖をとるためにプラスチックやごみを燃やすことで大気環境を悪化させている。
 インド訪問直前の11月21日に開催された東工大シンポジウムで講演した際、インド企業BERGENのKumar氏の講演が興味深かった。彼はインド政府トップ筋との繋がりが強く、インドの政策にも精通している。
 彼によれば、インドは巨大な市場で産業成長率は次の5年間でCAGR(年間平均成長率)35%に達するという。しかし、日本や韓国が完成した技術を、中国がダンピングをしてインドに持ってきてビジネスをしていることが大きな問題であるとも。とにかく今後のインドは、脱中国依存を実現したいという思惑である。
 またインド政府は、EVを2030年時点で40%規模(400~500万台)まで拡大することを目標にしているという。しかしこのままの勢いだと、EV、リチウムイオン電池(LIB)、充電器とも、中国がインド市場をとることになりそうだと。したがって、日印の協力により中国のビジネスを阻止したいとのことだ。現状、EVはゼロだが段階的に拡大する計画で、インド政府は約3000億円を投資する計画中とのことであった。

インド政府筋との意見交換
 インドでのシンポジウムでは、日本側からはホンダ・インド研究所、日本ケミコン、日立研究所、東京大学が、インド側からは、電気化学中央研究所(Central Electrochemical Research Institute:CECRI)の政府系研究機関がプレゼンし、主に議論するスタイルで進められた。インド政府系関係陣としてはCECRIの他に、インド政府科学技術省、インド自動車研究所(日本の自動車研究所:JARIに相当)、非鉄金属技術開発センター、インド工科大学(IIT)が名を連ねた。
 インドの発電は石炭発電(しかも低効率)が80%以上、電力負荷が上限を超えることで瞬停は頻繁に発生している。2017年、インドでの自動車販売数は400万台を超えた。モディ首相は今後のEV政策を主導しているが、自動車のテールパイプから排出される排ガス(Tank to Wheel)ゼロ化を進めている。それだけに、発電から排ガス(Well to Wheel)の議論が進んでいなかった。ようやく、一部の間でWell to Wheelの議論が交わされるようになってきた程度だ。
 チェンナイにあるCECRIは、15年前からLIBの研究を推進してきた。正極材、負極材の研究開発をしつつ、角型、円筒型のLIBの試作評価まで実施中だ。
 IITのムンバイ校は、LIBのセル製造設備開発およびLIBの材料開発を推進中。2030年にLIBの製造が可能になるよう開発を進めているとのこと。安全性と15年の耐久性を実現目標に掲げている。正極材料はNCM(ニッケル・コバルト・マンガン)三元系の8:1:1の比率で、日韓中が目指しているところまで検討中だ。

インド市場の拡大を目指すホンダを訪問
 1995年に設立されたホンダのインドの生産拠点ホンダカーズインディア・リミテッド(HCIL)を尋ねた。生産規模は2工場で年間30万台。そのうち、5%程度を南アフリカやミャンマー等に輸出中。現状7車種を生産、2019年には「シビック」を追加する。
 インド市場ではオートマ(AT)車よりもマニュアル(MT)車の方が人気とのこと。全長が4500mm以上のセダンが人気。ホンダの「シティ」は日本でいうとトヨタの「クラウン」並みのステータスとも。また、好まれるカラーは白が圧倒的で、シルバー、ベージュと続く。PM2.5で大気環境が悪いことから、汚れが目立つ黒は敬遠される。
 見学した生産現場はホンダらしく、整然としていて綺麗だ。ただし、人件費が安いこともあって、日本では完全ロボット化されている溶接工程も人海戦術にて対応しているなど、全工程に人が多い。生産タクトは135秒、日本では50秒タクトで完成車が出てくるので日本よりはかなり遅い。
 日系自動車企業でのインドでの存在感は圧倒的にスズキが大きい。インド国内での四輪車の50%をスズキが生産している。スズキの次はホンダ(5%の市場シェア)で、トヨタよりもホンダのプレゼンスが高い。さらに二輪車のスクーターセグメントでは、シェアが60%とホンダが断トツである。
 研究所の設計部門が生産工場に隣接しているので、自動車の組み立てが行い易い設計など、開発段階からの議論が一緒にできるので生産効率が上がり、その成果が如実に現れている。
 2016年には最長1時間の工場停電があったが、最近は緩和されており、大規模停電はなくなってきた。瞬停は引き続き発生しているが、UPSで対応している。
 ローカルコンテンツ(現地調達)は70%程度、日本でしか製造されない部品等もあるので、これ以上拡大する目標はあるが容易ではない。スズキは100%近い部品をインドで調達中、この分野でもスズキが先導している。
 ホンダの2030年における全世界電動化比率の目標は、内燃機関35%、ハイブリッド車(HEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)で50%、EVと燃料電池車(FCV)で15%という構成にある。インドでの電動化対応としての構成をどうするかは、今後の課題である。

インド市場における今後の展望
 2017年には400万台となったインドの自動車市場は、ドイツを抜いて4位に浮上した。2020年には日本を抜いて、2030年には1000万台規模になる見込みである。
 法規制は厳しい方向に向かっている。CO2規制は世界各国で欧州が最も厳しい(2021年から95g/km、以降段階的に削減)が、インドも欧州に準拠した水準で規制を強める。ガソリン車の自動車税を40%、EVには12%程度など、大きな差を付けることで電動化を進めようとする気運にある。
 石炭発電80%以上の現状で全面的にEVというのは極端な話だ。インド政府は、CO2が増えてもGDPが向上すれば良いと言う認識(上記のCO2削減目標とは矛盾)にある。2030年のGDPは、約1130兆円と展望される。
 確かに、現状のままEVを普及させてもCO2は減らないし(上記のCO2削減目標とは矛盾)、PM2.5は増加の一途を辿る。直近で市場にマッチする最大の解はハイブリッド車(HEV)と筆者は見通す。しかし、それを主張できるのはホンダ、トヨタ、スズキの3社のみなので、3社との考え方の連携、そして政府筋に提言する必要があるのではないか。モディ首相を取り巻く参謀に接触して、首相の外堀から教育する仕組みが良いのではないかと考える。
 “Make in India”を標榜するインド政府としては、日印の関係を大変重視しており、一方ではあからさまに中国を嫌う姿勢が鮮明だ。
 インド政府としてはLIBを国内で生産することをサポートする。LIBの四大部材(正極、負極、セパレータ、電解液)のどれもが現状では国内で生産できないが、とにかく“Make in India”に固執している。中国を毛嫌いしているので、中国のLIBセルが増えるようになればセルにも課税を検討する動きもあるようだ。政府は、イノベーションを促進する研究開発環境を充実させる計画をもつ。
 スズキは2017年にグジャラート州にて新工場を稼働させた。さらに、「スズキ―デンソー―東芝」が合弁でLIB生産拠点を同州に建設中。2020年の稼働と共に、スズキの電動車(日本で発売しているエネチャージ)を生産・販売することになり、インド市場における電動化の先駆けとなる。この延長上で、ホンダやトヨタのHEVがインド市場に拡散していくことを期待したい。

2018/11/22

第131回コラム

EVが減速する中国、加速する欧州
技術経営――日本の強み・韓国の強み
積極的なEV投資にはリスクも共存
2018年11月22日(木)
佐藤 登

 10月11日に「トップブランド参入で超激戦を迎えるEV市場」というタイトルのコラムを記述した。そこでは、電気自動車(EV)で先行してきた日産自動車、三菱自動車、米テスラ、そして中国ローカルメーカーに追随して、日米欧のトップブランドが本格参入する構えを打ち出していることで、EV市場は超激戦の競争を強いられることを述べた。

VWの抜きんでた電動化投資
 11月18日の日本経済新聞は、独フォルクスワーゲン(VW)がEV企業へ変身する準備に入ったことを報じた。それによると、同社は2023年までの5年間で、電動化の分野に約3兆8500億円を投資するという。25年には欧州生産分の17~20%をEVにするという積極的なEV路線をとる。
 電動化に加えて、自動運転とデジタル化の3分野に約5兆6000億円を投資するとのことなので、電動化だけの投資は全体の約70%を占めることになる。これまでの投資計画から比較すると30%の投資増に相当する。
 この投資とは別に、中国での電動化対応として5000億円強の投資を行い、2020年までに30車種のEVとプラグインハイブリッド(PHV)を市場に供給する計画とのこと。同社は既に、本年10月から上海市でEV生産工場建設に着手している。電動化投資では、先行する各社に対して断トツの投資額を示しているが、15年に発生させたディーゼル排ガス不正問題の払拭につなげるべく、かなり積極的に取り組んでいる様子が窺える。
 この一連の計画に伴い、電池生産についても触れている。独ジャーマン3(VW、ダイムラー、BMW)は、近年、モジュール(下図参照、セルユニットの集合体)以降の開発を自社内で推進する体制を整えてきた。
 今回のVWでの計画では、韓SKイノベーションと合弁でセルを生産する可能性があるという。SKイノベーション自体は元々、200億円の投資で韓国瑞山工場のリチウムイオン電池(LIB)の生産キャパを2018年内に3.9GWhまで拡大する計画を持ち、ハンガリーには850億円規模の投資で7.5GWhの生産キャパを構築し、2020年に稼働することを目標としている。さらには、中国での生産拠点を構える方針だ。今回のVWとの合弁は何処で実現させるのかは定かではないが、今後のサプライチェーンに大きな影響を及ぼすものと考えられる。
 VWが19年から量産を開始するEV「I.D.」シリーズは、一充電走行距離が550kmにまで達する。EV専用プラットフォーム「MEB」を適用することで、価格もディーゼル車と同等レベルにする計画だ。EVの量産は、独東部のツウィッカ工場、北部エムデン工場、そしてハノーバー工場の3拠点で、年間100万台規模の生産を計画中とのことだ。

日系各社に迫るEV戦略
 日系自動車各社でのEV戦略も動き出している。スペイン政府は、2040年までにガソリン車、ディーゼル車、さらにはハイブリッド車(HV)までも販売を禁止する方針を示した。純然たる内燃機関自動車の制限は理解できなくもないが、電動化で燃費向上を実現しているHVまで制限するのは現実的ではない。ディーゼル車規制の代替として位置づけられるHVの価値に理解を示していないといえる。
 消費者目線で考えれば、PHVと違って家庭内に充電器を設置しなくても良いHVは、燃費特性でも内燃機関自動車を上回ることで価値が高い。その価値を否定する考えは、欧州自動車各社がHVではなくPHVやEVを積極的に推進していることで、仮にHVを市場から締め出しても欧州勢にとっては痛くもない。むしろ、HVを制限することは、HVで強いビジネスを進めているトヨタ自動車とホンダの2トップに対する牽制そのもので、欧州自動車業界の保護政策とも見える。
 2021年から30年まで段階的にCO2排出量を制限する規制が先には控えている。ただし、この規制では自動車各社の商品ラインナップに任せる形で、電動化の種類を制限していないところに合理性があった。しかし、スペイン政府のようにHVまでに制限を加えることの意図は、欧州勢が進めるPHVとEV路線に対する防壁機能としてHVを排除しようとする考えがあるのだろう。
 そのような中、特にトヨタは近年、欧州でのHV販売を急速に伸ばしている。18年1~9月の欧州販売に占めるHVとPHVの割合は46%に達した模様だ。それだけ欧州におけるHVは市民権を得ていることになる。そのトヨタも、いよいよ2020年にはレクサスブランドで多目的スポーツ車(SUV)「UX」のEVを欧州で販売する計画になっている。HVに対する風当たりが強まる中、対抗策の一つとして構える。
 ホンダも19年には欧州で小型のEVを販売する計画だ。マツダも同様に、20年には日米欧向けにEVを供給するという。いずれにしても日系各社としては、欧州自動車各社が進めつつあるPHVとEV戦略に対して十分に競合できる商品が必要とされている状況にある。
 一方、中国市場においては中国政府が2019年から適用する新エネルギー車(NEV)規制の導入に呼応した日系各社の対応が進む。トヨタはNEV対応の一環として、18年9月から合弁相手の広州汽車ブランドでのEV販売を開始した。さらに、トヨタの自社ブランドEVを20年に発売することになっている。
 ホンダは、中国専用EVである「理念VE-1」の生産を来月12月から開始する計画だ。また、提携先の広州汽車集団との合弁企業が約530億円を投じて、年産17万台のNEV生産拠点を構えるという。
 マツダは合弁相手の中国長安汽車集団と共同でLIBやモーターを調達し、マツダがデザインと車体設計を主導する形で中国専用EVとして投入する。そのEVは小型SUVベースとなる模様で、日米欧で販売する独自開発EVとは異なるという。
 日産自動車は、中国で自社ブランド初のEVを18年8月から生産を始めた。先行した日産自動車に続き、トヨタ、ホンダ、マツダが中国市場で追いかける格好だ。
 となれば、中国のEV市場で苦戦するのは外資系自動車各社と真っ向勝負を迫られる中国ローカルメーカーであることは明らかだ。これまでは大規模な補助金で支えられてきたローカルメーカーであるが、昨年から補助金の減額が進んでおり、中国のEV販売にはブレーキがかかっている。さらには本年より、一充電走行距離が300km以下のEVに対する60%程度の補助金減額、150km以下のEVに対する補助金ゼロ化、一方、400km以上の走行距離を出せるEVに対しては補助金アップなど、メリハリのある補助金政策が打ち出されている。
 400km以上の走行距離を実現できる中国ローカルメーカーは、EV最大手のBYD(2018年1~10月で16万3306台:シェア20%強)や、中国2位の北京汽車集団(同期間で11万4474台)など大手メーカーに限られる。よって、本年からは弱小のEVローカルメーカーの淘汰が始まっている。
 次なる中国市場での競争段階は、2019年から一層市場に供給される日米欧のトップブランドメーカーのEV間での競争、そして中国ローカルメーカーとの競合であろう。
 そして次なる競争が待ち構える。それは20年に撤廃される中国政府の補助金ゼロ化政策である。底上げで保護されてきた中国ローカルメーカーにとっては試練の場となる。ブランド力や技術力、信頼性や安全性の高い外資系各社のEVと真っ向勝負はできるだろうか? 現状のレベルを考えれば勝負にならないはずだ。ローカルメーカーが生き残るためには、外資系との合弁事業にて外資の技術力やノウハウに依存することが不可欠だろう。

新規参入組によるEV市場の更なる激化
 既に、英ダイソンはEV開発に多大な投資と開発を進めている。2020年以降を目標にシンガポールでの生産を開始するとのこと。家電製品での基幹デバイス開発と販売での実績は立証されているが、信頼性や安全性、耐久性が要求されるハードルが遥かに高いEV領域である。トップブランドの既存自動車各社が全面的に市場競争を繰り広げる段階で、競争力あるEVをどこまで打ち出せるのか、いささかの不安材料とリスクは拭いきれない。
 最近の11月6日に、調査会社のDIGITIMES Research社が報道した内容によれば、米アップルがEV「アップル・カー」に関して、欧州中堅自動車メーカーと台湾系の受託生産企業との協力で、計画が進行しているとのこと。一時はEV事業を断念した同社であるが、19年にはアップル・カー事業を運営する会社を他社との合弁で設立し、20年にアップル・カーの発表というロードマップのようである。この報道の信憑性は詳らかではないが、この計画が実行されることになれば、ますますEV市場の競争が拡大することになる。
 米国ゼロエミッション(ZEV)規制、中国NEV規制、欧州CO2規制等の法規が強化されていく中、電動化の勢いは止まらない。しかし、その中で中国NEV規制が適用される中国市場を中心に、そして欧州においてEV偏重と言える壮大な事業展開が起ころうとしている。
 中国政府は2020年にEVを主とする新エネ車を200万台、25年には700万台を目標に掲げる。現在、中国国内で新エネ車を生産する現地企業は250社に及ぶという。その各社が計画する新エネ車を積み上げると、年2000万台を超えるとの試算もある中、かなりの無理が共存しているのも実態だろう。
 ビジネスチャンスという理解とリスクが両輪のように動きつつあるEVシフト。勝利の方程式を導ける構図は、各市場におけるEV顧客規模の試算、使用上のハンディを極力減らせる魅力あるEVの開発、信頼性と安全性をリードできる製品戦略、補助金に依存しなくても自立できるビジネス、競合他社との差別化、電動化比率におけるEV比率のバランスなど、複雑な要素が絡み合う解が求められている。

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